第3回公益法人有識者ヒアリング議事概要

公益法人有識者ヒアリング

1 日時: 平成14年5月17日(金) 10:00〜13:00
 
2 場所: 内閣府5階特別会議室
 
3 出席者: 雨宮孝子 (松蔭女子大教授)
猪瀬直樹 (作家)
能見善久 (東京大学教授)
堀田 力 (さわやか福祉財団理事長)    (50音順)

4 議事概要
 石原大臣、熊代副大臣の挨拶の後、各有識者からの説明以下のとおり。
 
(1)雨宮孝子氏(資料1および別表を用いて説明)
  • 我が国の公益法人の設立は許可制だが、公益は国家が保護・監督するものであるという、国民を信じない思想に立っている。諸外国は法人設立を準則主義としている(公益性の認定のみ認可としているものもある)。
  • ガバナンスについては、制度の悪用を防ぐための主務官庁の監督制というが、現実に悪用が防げているのか。むしろ情報公開により透明度を高めることが重要であり、また複数の民間評価機関を設けるべき。法人の役員は役所のためではなく国民のために責任を負うと考えるべき。
  • 我が国の公益性の判定は所管省庁の自由裁量。NPO法では公益性という文言は使わず、要件を明確にした。海外では特定の機関が判定したり、事後的なチェックをかけたりしている。
  • あるべき姿としては、幾つか案を挙げるが、法人形態を非営利法人と営利法人に分け(いずれも準則主義)、非営利法人のうち公益性が認定された法人を特別法で公益法人として自動的に税制優遇を与える案がよいと思う。
(2)猪瀬直樹氏(資料2を用いて説明)
  • 公益法人全てが悪ではないというが、問題とすべきは公益法人自体ではなく、天下りの受け皿となり、収益を挙げるために資格試験等を次々に作る「官益法人」である。非営利法人はNPOなりに一元化して、「官益法人」は消滅させてしまうのが正しい道筋である。
  • 抜本的な改革に取り組むと民法改正で膨大な期間を要するので、より実践的な方策として、税優遇を受けている「官益法人」から、いかに税金をとるかということを提案したい。公益法人は法人税非課税だが、収益事業に関しては軽減税率だが課税対象となっている。この収益事業のリストはこの20年間見直されていないが、民間と競合しているような検査業務や講習事務が読み込めるか曖昧になっている(かろうじて「請負業」で読めるが、認識していない法人もある)。よって、検査業務等をリストに明確に追加して国税庁に摘発させれば、問題の所在が明らかになる。
(3)能見善久氏(資料3を用いて説明)
  • 非営利法人の中でも、中間法人については、社会貢献とは関係ない目的であっても社会の発展につながるものとして棲み分けがはっきりしているが、NPOと公益法人については棲み分けが曖昧。
  • 公益法人制度の改正の在り方としては、公益法人類型を残すかどうか、税優遇と法人認定を切り離すかどうかをポイントとして幾つかタイプが描けるが、公益法人類型は非営利法人一般法に入れ込み、その中で公益性を有すると課税庁に認定されたものを別途税優遇するという案が比較的有力と考えられている。しかし、公益的か否かは税の論理だけではなく、社会全体の期待など税以外の観点も入ってくる。客観的な基準を法整備した上で公益性を判断し、自動的に優遇を与えるということでよいのではないか。許可から認証、準則への移行は可能であると考える。
  • 公益目的・公益活動遂行義務といった概念を導入すべきではないか。理事の責任も公益活動を行っているか否かで判断すべき。公益活動を実際に行わせる仕組みを作ることが大切であり、また、受益者としての一般国民あるいは寄付者の監査請求などによるガバナンスの監視なども必要。
  • 基本財産収益のみでの活動には限界があり、活動を中心に考えれば基本財産取り崩しも許容できるのではないか。
(4)堀田 力氏(資料4を用いて説明)
  • 悪い公益法人はたくさんあるが、まじめな法人もあるのであり、一緒にしないで欲しい。なくすものはなくし、他の法人類型に移すものは移して、整理をしないとあるべき姿は見えてこない。
  • 行政的な事業を実施するものは行政、独立行政法人に、営利競合する事業を実施するものは営利法人に移行させ、残ったものを非営利法人とするのが適当。法人の選別には強力なプロジェクトチームを用意する。そして非営利法人の中で特に公益性の認定を受けたものが税制上の優遇を受けるとともに、それ故にのみ監督を受けるということとする。
  • より具体的には、民法に新法人の通則規定を置く。営利法人と対になることを前提に、登記をもって設立とする。問題あるのは百も承知だが、公益性の認定は税務当局に行わせるのがいいと思う。認定の基準としては、NPOのパブリックテストの内容をより実態に即した現実的なものに変えて適用し、財政的支援者、ボランティア、受益者の人数等を要素に客観的基準を持って認定する。こうすれば、「官益法人」等おかしなものは排除されるのではないか。また、情報開示は徹底的に行い、虚偽の開示には罰則を課すべきである。
     
 各有識者説明の後、以下のとおり自由討議。
  • 非営利法人には私的目的追求型の法人も含まれるものであり、非営利法人一律の情報開示とすべきか疑問。
  • 非営利法人一般に適用される最低限度のガバナンスを民法で規定すればよい。私益とはいえ、社会的に存在する以上何らかの開示が必要。
  • 公益法人を他の法人に移行させるに当たり、税優遇されていた分については一定のルールに基づき吐き出させればよい。具体的には(1)移行の際一定の計算方法で算出された額を吐き出させ残りを引き継がせる、(2)移行の際は手をつけず、法人解散の際に吐き出させる、といった方法があると思う。
  • 今の段階で公益法人として問題あるものは、客観的な基準を設けて評価すべき。公益性ないものについて、現行の規定でも取り消しはできる。取り消してしまえば解散することになるが、その後で中間法人なりをつくるのも自発的なものであり、役所がどうこうするものではない。
  • 公益性を認定したとしても、実績がみとめられなければ、市民の告発なりで取り消すといった事後的担保を強化すべき。全て実績で考えるべきで、非営利法人全てがそうあるべきである。
  • 公益法人を問題視するのは、ひとえに国民の税金に直結しているから。公益法人に入っている税金をどれだけ削るか追求しないと日本で非営利法人は育たない。明治29年の民法制定時に立法者は公益の範囲がここまで大きくなるとは想定していなかっただろう。こんなに「官益法人」ができたのは予定外。これら自体をなくすことは難しくとも税金を取ることはできる。
  • 税制優遇について、収益事業の軽減税率にみなし寄付の制度をセットにすることに意味があるのか。公益事業に使うためだけに収益事業を行っているというものでもないのだから、営利法人と同様、収益事業の軽減税率は止めて、その分みなし寄付の割合を100%とは言わないまでも高めた方がよい。これまでみなし寄付の割合をどんどん低減させてきているが、理念が認められない。
  • 寄付金についてもっと広く優遇措置を認めることとすれば将来的には効果あると思うが、今はまだ社会が十分な寄付を行うほど成熟しておらず、収益事業で得た利益を運営費に充当しているのが実態であり、今はまだ軽減税率のほうが有り難い。営利法人は利益を社員で分配しようとするものだから、その前に税金を取ってしまおうという考えなのだろうが、非営利は、役員報酬すら受け取っていないようなのが建前。隠れて儲けている一部の法人のあおりでまじめな法人まで剰余金を取られてしまうのはやっていけない。
  • 民法改正を始めると審議会で議論して10年はかかるのではないか。役所のように10年単位でものを見ないで1年単位で考えるべき。収益事業軽減税率リストの追加は政令改正だからすぐにできる。早くやったらいい。
  • 収益事業の幅を広げるという話があるが、しばしば問題が指摘される金融収益を新たに課税対象とするのはやめてほしい。それしか収入がない法人もあるのに課税されたらとても立ち行かなくなる。
  • 社団に比べ財団の設立は諸外国でも厳しい。信託や基金という形もあるのであり、新非営利法人類型に非営利財団を設けるかというのは論点の一つになると思う。

以上


(文責:行政改革推進事務局)


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