III 特殊法人等の改革のために講ずべき措置その他の必要な事項


  1. 趣旨
    (1) 特殊法人等(認可法人を含む。)は、廃止されるもののほかは組織形態を見直し、民営化(特殊会社化、民間法人化、完全民営化)、独立行政法人化等が行われることとなるが、それぞれの組織形態の一般的な考え方は以下のとおりとする。なお、法人の事業の性格等に応じて個別に異なる取扱いをすることはありうる。

    (2) 特殊法人等の民営化、独立行政法人化等を行う場合、いずれの形態についても、特殊法人等について指摘されている弊害(経営責任の不明確性、事業運営の非効率性、組織・業務の自己増殖、経営の自律性の欠如等)を可能な限り克服しうるよう、制度設計上及び運用上留意する。

    (3) 現在の特殊法人等への公務員の再就職に関しては、例えば、退職金が高すぎるのではないか、各府省OB人事の一環として取り扱われているのではないか、処遇に業績が反映されていないのではないか等の国民の厳しい批判があるところである。
     公務員の再就職の在り方については、公務員制度改革の中で総合的観点から結論が出されるべき問題であるが、今回の特殊法人等改革に当たっても、これら国民の厳しい批判を真摯に受け止め、対応を行うこととする。

  2. 民営化
    (1) 基本的考え方
     事業の採算性が高く、かつ、国の関与の必要性が乏しい法人、企業的経営による方が事業をより効率的に継続実施できる法人又は民間でも同種の事業の実施が可能な法人は、原則として民営化する。

    (2) 特殊会社
    必要に応じ、国等の株式保有義務について法定する。また、必要な条件整備等を行い、逐次株式の公開を行う。
     
    移行後の法人において、常勤役員について、法人の業務内容等に応じ、内部登用を含め民間人の積極的な起用に努める。
     特に、監査役員については、関係省庁以外の者及び外部の者の登用に努める。
     
    主務大臣は、会社の事業の適正な実施を確保するため必要がある場合には、特別の法律に基づき、新株発行、社債募集、長期借入の認可、代表取締役等の選解任の認可、定款変更等の認可、事業計画の認可等必要な監督を行うことができる。
     
    必要に応じ行為規制を課す等により、特殊会社の業務が独占の弊害を生むことのないよう留意する。

    (3) 民間法人化された特殊法人・認可法人
    民間法人化された特殊法人・認可法人は、臨時行政改革調査会最終答申(昭和58年3月14日)における「自立化の原則」に則ったものとする。
     なお、民間法人化する場合には、@民商法に基づく法人、A特別の法律に基づく法人で法律上数を限定しないもの、B特別の法律に基づく法人で法律上数を限定するもの、の順に民間法人化の可否を検討する。
     
    なお、行政代行的業務その他競争が不適当な業務については、次のいずれかのような場合には、制度的独占による弊害を克服するための措置が十分に講じられることを条件に、制度的独占を認める。
    @当該業務が当該法人の従たる業務にとどまるものである場合
    A社団的性格の法人が当該法人の構成員の費用負担によって、構成員を対象に行う共益的な業務であって、当該業務の運営について構成員による統制が確保されている場合
     なお、上記@において、従たる業務についての制度的独占によって法人の業務全体が実態上独占となる場合には、従たる業務についての制度的独占は、上記@にかかわらず、認められない。
     おって、制度的独占を排してもなお実態上独占となる場合には、必要に応じ行為規制を課す等により、法人の業務が独占の弊害を生むことのないよう留意する。
     
    公益法人に対する指導監督基準の在り方を踏まえ、役員人事、ディスクロージャー等に関する政府としての統一的な指導監督基準を策定する。
     特に、監査役員については、関係省庁以外の者及び外部の者の登用に努める。

    (4) 完全民営化
     会社の業務が独占の弊害を生むことのないよう留意する。

    (5) 地方共同法人(仮称)
    地方公共団体の共通の利益となる事業等、その性格上地方公共団体が主体的に担うべき事業であって、国の政策実施機関に実施させるまでの必要性が認められないものの実施主体の選択肢の一つとして、当該特殊法人等を地方公共団体が主体となって運営する「地方共同法人」(仮称)とすることが考えられる。
     
    法人格は、民商法又は特別の法律に基づく法人とする。
     
    国又はこれに準ずるものの出資は、制度上及び実態上受けない。資本金が必要な場合には、関係地方公共団体が共同出資する。
     
    法人の役員は、自主的に選任されるものとする。
     
    法人内部に、必要に応じ、関係地方公共団体の代表者が参画する合議制の意思決定機関ないし審議機関を設ける。
     
    上記イのような事業について、地方公共団体の意向等を踏まえ、実施主体として他の組織形態を採用することも選択肢となりうる。

  3. 独立行政法人
    (1) 基本的考え方
    廃止又は民営化できない事業であって、国の関与の必要性が高く、採算性が低く、業務実施における裁量の余地が認められる事業を行う法人は、事業の徹底した見直しを行った上で、原則として、独立行政法人通則法及び個別法に基づく「独立行政法人」化する。
     
    特殊法人等を独立行政法人化するに当たっては、独立行政法人制度の以下のような趣旨を踏まえた制度設計(主務大臣の個別的関与、予算措置等)とする。
    A. 主務大臣と法人の判断・責任事項を峻別し、それぞれが業務を最大限に効率的に遂行するようにするため、
    a.国が、法人が達成すべき目標を設定するとともに事後的にその達成状況を評価し、不満足な業績に関しては法人の長に責任をとらせる仕組みとすること。
    b.国から与えられた目標の達成に関し、主務大臣の一般的監督権を排し、主務大臣による関与を必要最小限のものに限定した上で法令に明確に定め、主務大臣と法人の判断・責任事項を明確に峻別するとともに法人の業務運営の自律性(裁量)を確保すること。

    B. 定期的(中期目標期間終了時=3〜5年毎)に組織及び業務全般にわたる検討を行うこと等により、不要不急な組織・業務の維持・拡大を認めないことに加え、当該独立行政法人の存廃・民営化について定期的に検討すること。

    C. 企業会計原則の導入や情報開示により、経営内容の透明化を図ること。

    (2) 組織及び運営の基本
    独立行政法人の組織及び運営の基本は、ロ以下に掲げるほか、独立行政法人通則法及び「中央省庁等改革の推進に関する方針」(平成11年4月27日中央省庁等改革推進本部決定)による。
     
    主務大臣は、中期目標期間終了時にその組織及び業務の全般にわたり、当該法人の存廃・民営化を含めて検討を行い、所要の措置を講ずる。
     
    役員給与等の支給基準を定め、外部有識者からなる評価委員会の評価を受けるという独立行政法人制度を通じて、毎事業年度終了後及び中期目標期間終了後に業務の実績について評価を行う。その評価結果については、独立行政法人通則法の定めるところに従い、報酬(役員給与・退職金の大幅カットを含む。)や役員人事(解任を含む。)に反映させる。
     
    主務大臣が独立行政法人に対し監督その他の関与を行うことができる事項は法令において定めるものに限る。法人監督に関する一般的な監督規定は設けない。
     主務大臣は、独立行政法人の事業の適正な実施を確保するため必要がある場合には、個別法又は作用法に基づき個別的関与を行うことができる。
     なお、主務大臣の個別的関与は、国と独立行政法人との判断・責任事項の分担と適合したものとなるよう制度化されなければならない。
     
    独立行政法人の積立金等の処分については、個別法で定める。個別法では、法人の業務、財務内容の性質に応じ必要な場合には積立金等の国庫納付について定める。
     
    独立行政法人に対する国の予算措置の手法(運営費交付金及び施設費等のほか補助金等による措置も認められることとする。)については、個々の独立行政法人の業務・財務の性格等を勘案して定める。
     その際、予算措置に伴う財政統制と国と独立行政法人との判断・責任事項の分担とは互いに矛盾しないよう制度化されなければならない。
     
    国の予算措置の手法の多様化等に伴い、「独立行政法人会計基準」について所要の見直しを行う。
     
    特殊法人等を独立行政法人化する場合は、役職員は、原則として非国家公務員とする。
     
    特殊法人等を独立行政法人化する場合は、役職員数は、事業見直し後の事業内容等に応じ、必要最小限のものとする。
     
    今回の特殊法人等改革で独立行政法人に移行することが決定した法人についても、平成13年度中に下記4(2)ロの対応を行う。
     
    高齢役員の就任規制については、現在の特殊法人等に関する規制に準じた規制を導入する。
     
    役員報酬・退職手当の支給基準については、独立行政法人通則法に従い、全て公表する。

    (3) その他
    特殊法人等のうち法人の毎年度の予算について国会議決・承認の対象とされている法人については、当該国会議決・承認の趣旨、事業の性格等を勘案し、然るべき制度設計を行う。
     
    一の法人において性格の異なる複数の業務を行う特殊法人等のうち、特に下記4により民営化又は独立行政法人化以外の組織形態を選択することとされている業務を行っている場合には、@法人を分割する、A独立行政法人化し、一部の業務を目的外業務として整理する、B当該特殊法人等の業務のうち独立行政法人化になじむ業務について独立行政法人通則法の規定に準じた管理を行う等の手法を選択する

  4. その他
    (1) 特別の組織形態等
    共済組合類型の法人(47法人)については、国の社会保障制度の一部を運営する機関であって主務省の政策実施機関とは性格が異なることを勘案し、特殊法人等の対象から除外する。
     
    政府からの高度の自主性が認められている法人、現時点では臨時的・特例的に追加された業務を多く行っており、平常時とは組織及び業務の在り方が大きく異なる法人等については、それぞれ徹底した事業見直しを行った上で、現在の組織形態により存続することも選択肢とする。
     
    国直轄化は、国の関与の必要性が高く、採算性が低い事業であって、他の実施形態をとることが極めて困難な場合についての選択肢とする。
     国直轄化には、国自ら事業を直接執行することのほか、事業の主要部分を外部委託し、委託者としての業務のみを国が行うことを含む。
     国直轄化を行う場合には、既存業務との一体化等効率的・効果的な事業実施を図ることとし、行政組織の肥大化につながらないよう留意する。

    (2) 共通的事項
    内閣は、特殊法人等(特殊会社を含む。)、民間法人化された特殊法人・認可法人及び独立行政法人の役員の人事及び処遇の在り方について、透明で客観的なルールを定め、公表するとともに、その実施につき、各省庁を適切に監督する体制を強化する。
     
    特殊法人等の役員退職金について、平成13年度中に大幅削減を決定する。
     特殊法人等の役員給与について、公務員及び特殊法人等の職員並びに民間企業の役員給与の水準を勘案しつつ、適切な水準となるよう、平成13年度中に削減を決定する。
     上記の対応を行った上、特殊法人等の役員給与・退職金の支給基準を公表する。
     
    特殊法人等(特殊会社を除く。)及び独立行政法人への国家公務員出身者の就任については、役員出向の道を開く。その実際の運用に当たっては、短期在職について厳しく対応する。なお、役員出向によらない場合と均衡を失しないよう制度を構築する。
     
    各独立行政法人等(独立行政法人等情報公開法の対象法人)の役員について、当該法人は、退職公務員及び独立行政法人等の退職者の状況を公表するとともに、その子会社及び一定規模以上の委託先の役員について、退職公務員及び当該独立行政法人等の退職者の状況を把握し、公表するよう努める。内閣は、公表されたものをとりまとめる。
     
    特殊法人等(特殊会社を含む。)、民間法人化された特殊法人・認可法人及び独立行政法人のうち、上記ニに掲げる法人以外の法人については、当該法人が、その法人の役員に就いている退職公務員の状況を公表するとともに、その子会社及び一定規模以上の委託先の役員に就いている退職公務員及びその法人の退職者の状況を把握し、公表するよう努める。内閣は、公表されたものを取りまとめる。
     
    国の財政的な支援等(過去に行われたものを含む。)に応じ、剰余金等の国庫納付規定を整備する。
     
    今回の組織形態の見直しにより組織変更される特殊法人等の債権債務関係については、適切に承継されるものとする。
     
    収支状況が悪化した場合に意図せざる国の財政負担が生ずる可能性がある法人を対象として、主務大臣が事業の収支状況を定期的に公表するとともに、収支見通しとの乖離が生じた場合に必要な見直しを行う制度の導入について検討する

    -
    もどる