行政改革担当大臣談話


「公務員制度改革の基本設計」について


平成13年6月29日

 「公務員制度改革の基本設計」が、行政改革推進本部において決定されました。この基本設計は、公務員制度改革に関するこれまでの検討結果を政府の共通認識としてとりまとめ、新たな制度の骨格と検討課題を示したものです。

(公務員制度改革の意義)
 国民は、公務員にとってオーナーであり最大のクライアントです。その国民から、公務員が「官僚主義」、「お役所仕事」といったマイナスイメージを持たれているとすれば、これほど不幸なことはありません。

 小泉内閣では、「聖域なき構造改革」としてあらゆる分野での改革を唱え、これまでの政策、制度、政府関係機関のあり方など広範な分野で大胆な見直しを行おうとしています。改革を進めようとしている今こそ、公務員には、既存の価値観にとらわれず、国民の視点に立った新たな政策を企画立案し、ただ前例を踏襲し予算を消化するのではなく、コスト意識や顧客サービス意識の徹底を図ることが求められています。

 公務員制度改革は、こういった国民の求めに応じ、公務員の意識・行動原理を改革することで、行政のあり方を改革しようとするものです。国民の視点から行政を見直すことが、公務員制度改革の原点です。

(基本設計における四つの視点)
 「公務員制度改革の基本設計」は、このような認識の下、国民の視点に立って、明日の行政を担う若手の職員や、これから行政を志す者が希望をもって働くことができる環境も念頭に置き、新たな公務員制度の実現を目指して、以下の四つの視点を中心にとりまとめたものです。

 第一に、公務員の世界に能力・実績主義を導入することで、一人一人の能力を向上させ、それを最大限に発揮できる環境を整えることです。
 政策立案機能の強化や、サービス意識の徹底など、行政が国民のニーズに応えるためには、一人一人の公務員が、持てる能力を最大限に発揮して職務を遂行していかなければなりません。
 これまで、公務員は、採用試験区分や年次にとらわれた、いわば硬直的な人事を行ってきました。また、頑張った者もそうでない者も、差のつきにくいシステムを取っていました。公務の特殊性はあるにしても、民間では考えられないことです。
 国民の求めていることは何か、という点も踏まえた「能力評価」と「業績評価」からなる新たな評価基準を導入し、あわせてこれまでなおざりにされていた公務員の自己能力開発の道を整備し、努力の結果がきちんと反映される人事制度を作り上げたいと考えています。

 第二に、民と官との人材交流を促進することです。
 現行の国家公務員法では「私企業からの隔離」という考え方が取られていますが、公務員を民間から隔離することが、かえって国民の感覚からかけ離れた「お役所仕事」を生む一因だったのではないでしょうか。
 公務の中立性を確保することは当然ですが、民間の考え方や知恵を活かしながら、国民の立場に立った行政を進めるため、透明・公正なルールに従って民と官の間の人材交流を大胆に促進したいと考えます。

 第三に、各府省が権限と責任を持って、主体的に業務の効率的な執行体制を整備することです。
 これはごく当たり前のことのように聞こえますが、これまで、各府省は、人事制度などに関し、一律・横並びの運用を行うことに終始してきたと言っても過言ではありません。今後は、国民や時代の要請に的確に応え、責任を持って主体的に組織・人事をマネジメントすることが重要です。同時に内閣も、公務員制度を時代の要請に合ったものにするよう、主体的な役割を果たしたいと考えています。
 また、内閣の重要課題として特定分野の機能を強化することが必要と判断した場合には、府省の枠を超えてダイナミックに人員を再配置することができる仕組み(インナーソーシング制度)を導入するなど、国民や時代の要請に素早く、的確に対応できる政府を作り上げたいと考えています。

 第四に、「天下り」問題に対応することです。
 いわゆる「天下り」問題については、国民から厳しい批判があります。「押し付け型の天下り」を根絶するために最も重要なのは、「天下り」を絶えず国民の目線でチェックしつづけることです。公務員の再就職先や、その会社の業務内容や出身官庁との関係など、関係する情報を徹底的にディスクローズします。
 公務員が、厳格なルールの下で、自身の能力を活かして再就職することは、一律に否定されるべきではありません。しかし、民間企業が、仕事上やむを得ず「天下り」を受け入れているという指摘もあります。規制改革を進め、民と官の関係を総点検することで、この問題を本質的に解決するための努力を続けて参ります。

(改革実現に向けた今後の取組み)
 今回の公務員制度改革は、半世紀以上前に制定された現行制度を根本から改革しようとするものです。改革実現のためには、多岐にわたる関係法令の改正作業に取り組む必要がありますが、この改革を実効あるものとするためには、制度を改めるだけではなく、現在の行政組織の風土や公務員の意識を改革することが必要であり、まさにこれからが正念場となります。
 今回の改革は、国民の視点に立った行政を実現するとともに、全ての公務員が、使命感と誇りを持って国民のために働くことのできる制度を確立することを目指すものです。
 今後、この基本設計に基づいて検討を進め、12月を目途に「公務員制度改革大綱」をとりまとめることとしています。国民の皆様の御意見を十分お聞きし、全国の様々な分野で働いている公務員の声や関係者の意見も反映させながら、実効性の高い制度設計に向けて検討を進めていきたいと考えていますので、皆様の御理解と御協力をお願いいたします。