公益法人制度についての問題意識

〜抜本的改革に向けて〜



 行政改革推進事務局は、平成13年4月13日に公表した「行政委託型公益法人等改革の視点と課題」の中で、公益法人制度の抜本的改革の必要性について言及したところであるが、これを踏まえて、公益法人制度に関する当事務局としての現時点における問題意識を以下のとおり取りまとめた。


I 公益法人制度の改革の必要性

 公益法人は、民法第34条に基づき設立される社団・財団で、現在全国で約2万6千法人あり、活動内容は極めて多種多様であるが、その多くは、政府にも営利法人にも基本的にはなじまない分野で、広く社会全般の利益に資する様々な活動を展開していると考えられる。

 一方で、公益法人制度は、民法制定以来、100年以上にわたって基本的には変更されておらず、公益法人の在り方に対する批判や問題点の指摘が存在するのもまた事実である。

 いわゆるNPOや中間法人などの非営利法人制度が最近制度化される中にあって、様々な観点から指摘されている問題への対応を含め、今後の公益法人の果たすべき役割や在るべき姿を見据え、現在の制度の抜本的な改革に向け、真剣な検討が求められている。


II 主な「検討課題」と、それに関し指摘されている主な問題点

○ 「公益」の範囲、「公益性」の判断

〔現状〕主務官庁が「公益性」を判断して設立されている。
〔主な指摘〕「公益」に関する事業を行うはずの公益法人が、国民の眼から見て必ずしも「公益」とは言い難い事業を行っているものもあり、その判断を厳格に行うべきではないか。
主務官庁制(主務官庁による設立許可や監督)の下で、公益性の判断が、主務官庁の自由裁量に委ねられているため、統一のとれていないものとなっているのではないか。
公益の内容は多種多様であり、全国統一的な基準を設けたり、行政が一律の基準で判断したりすることは、現実的には難しくなっているのではないか。

○ 公益法人の設立許可

〔現状〕主務官庁が設立を許可している。
〔主な指摘〕主務官庁制の下で、公益性の判断が、主務官庁の自由裁量に委ねられているため、統一のとれていないものとなっているのではないか。
官主導で、公益法人を設立したり、行政代行的機能を担わせたりしている場合があるのではないか。特に、公益法人という民間法人に行政代行的機能を担わせることは不適当ではないか。
公益活動を行う民間の法人について、設立に当たり、今後もなお許可主義を維持する必要はあるか。

○ 主務官庁の指導監督

〔現状〕主務官庁制の下で民法及び「指導監督基準」にのっとり指 導監督が行われる仕組みとなっている。
監督する立場の主務官庁の体制(組織・人員)に比べ、法人の数が増加傾向にある。
「指導監督基準」において、理事のうち所管官庁の出身者が占める割合は理事現在数の3分の1以下とされている。
〔主な指摘〕主務官庁の指導監督が必ずしも行き届いておらず、監督の在り方を改善する必要があるのではないか。
指導監督により法人の健全な運営を確保するといった考え方に限界はないか。
不適切な活動を行った公益法人には、より厳正な対応をすべきではないか。
公務員の再就職先として安易に用いられているのではないか。また、その在り方につき見直すべきではないか。

○ 公益法人の機関・組織、ガバナンス・規律のあり方、監査等

〔現状〕現行民法は、主務官庁の設立許可を前提に、公益法人の機関・組織、監査等について、詳細な規定を置いていない。
〔主な指摘〕昨今、公益法人の不適切な運営に起因する不祥事が明るみに出ているが、公益法人の適切な運営を確保するための内部管理機能が不十分なのではないか。
法人が自律性を持った責任ある運営を図るための方策を検討する必要はないか。

○ 公益法人のディスクロージャー

〔現状〕法律上の規定はないが、公益法人の「指導監督基準」において、各法人は、定款・寄附行為、事業報告書、収支計算書、貸借対照表等を、原則として一般の閲覧に供することとされている。
〔主な指摘〕「公益」を目的とする法人であるにもかかわらず、その実態が国民から見て明らかとなっていないのではないか。
現在行うこととされているディスクロージャーが徹底されていないのではないか。
事業内容のディスクロージャーについてのルール化や、手法・内容の改善を図る必要はないか。

○ 公益法人に対する税制

〔現状〕公益法人に対しては、@税法上の収益事業以外の事業から生じた所得の非課税措置、A収益事業から生じた所得に対する軽減税率の適用、B収益事業部門から公益事業部門への支出についての損金算入等の措置がある。
また、特定の公益法人(特定公益増進法人等)に寄附を行った者に対しては、寄附金控除等の措置がある。
〔主な指摘〕営利法人が行う事業内容と大きな差がないものが税の恩典を受けるのは不公平ではないか。
税の恩典の付与については、公益法人という「類型」によるのではなく、それを付与するに値する公益性を有する法人や事業等に限ることは考えられないか。
公益法人に対する課税について、執行面での対応を充実させる必要はないか。

○ 公益法人から中間法人・営利法人への移行

〔現状〕公益法人から中間法人への移行についてのメルクマール、 手続規定がない。
営利法人への転換については、「公益法人の営利法人等への転換に関する指針」が存在するが、実例はほとんどない。
〔主な指摘〕公益法人の活動は極めて多種多様であり、何らかの類型化を行った上で、適切な法人形態への移行を図るべきではないか。
「公益」とは言い難い事業を行っているものに関し、実際に他の法人形態への移行が起きるように、措置を行う必要はないか。
公益法人は民間法人であり、一旦公益法人として設立を許可した以上、他の法人形態に移行させることは、法人側の賛意が得られない限り難しいのではないか。

III 今後の取組方針

 現在の公益法人制度には、主なものだけでも、上記のように広範にわたる課題が存在すると考えられる。これらはいわば積年の課題であり、しかも、相互密接に関連するため、短期間ですべてを解決することは容易ではない。

 しかしながら、21世紀を迎え、新たな行政システムを構築するこの機会に、今後の公益法人の果たすべき役割や、在るべき姿を見据えて、上記のような諸課題とその対応策につき、関係府省とも連携しながら精力的に検討を重ねていきたい。

 その上で、平成13年度中を目標に、そこから描き出された今後の公益法人制度の目指すべき方向性と、それに向けた改革のプロセスなどを内容とした抜本的改革の基本的方向を示すこととしたい。


以  上


(別添)

「行政委託型公益法人等改革の視点と課題」(抜粋)

IV 公益法人制度の抜本的改革の必要性

 公益法人の大半を占める行政代行的事務・事業を行っていない公益法人にあっても、昨今不適切な運営に起因する不祥事が明るみに出ており、国民の公益法人全般に対する見方が厳しくなってきているところである。このため、去る1月30日の閣僚懇談会において、橋本行政改革担当大臣から国所管の公益法人に対する総点検を各府省に要請し、4月始めまでにその結果の報告を受けたところである。
 このような状況を踏まえると、大綱に示された改革の方針は現在の公益法人に対する国民の批判の全てに応えるものとは必ずしも言い切れないことから、国所管公益法人の総点検の結果等も踏まえた対応が必要である。
 その際には、公益法人制度の基になる民法の規定が必ずしも十分体系的に整備されていないと考えられること、いわゆるNPOや中間法人が制度化され又はされつつあること等をも考慮する必要がある。
 以上の状況に鑑み、今後行政改革推進事務局としては、関係府省と連携しながら、立法化を含めたより抜本的な公益法人制度改革に向けた基本的方向を示すべく検討を進めることとしたい。