○:委員
●:事務局

第7回 非営利法人ワーキング・グループ

−議事録−


平成16年3月16日(火)10:00〜12:00
場所:虎ノ門第10森ビル4階

○ それでは、始めましょうか。今日は幾つか資料が出ておりますので、この資料に基づいてまた行いたいと思いますけれども、順番としては最初に資料11について議論していただきたいと思います。
 ということで、最初に事務局の方から説明をお願いします。

● それでは、WG資料の11を御覧いただければと思います。この資料は、前回に引き続きまして、公益性を要件としない財団法人制度の在り方について御議論いただければと思い作成いたしました。タイトルに「(議論のたたき台)」としておりますが、前回のワーキンググループでの議論に表われた検討項目を踏まえて、事務局なりに、例えば以下述べるような案がたたき台として考えられるのではないか、この整理を基に更に公益性を要件としない財団制度について御議論を深めていただければと思います。
 早速中身について御説明いたします。
 1つ目の○ですが、公益性を要件としない財団法人制度の在り方について、@目的、A基本財産、Bガバナンス、この3つの視点から、あるいはこの3つに関する規律の組合せによって、次の4案が考えられるのではないかと考えました。お手元に、図も置いております。横に置いていただければと思いますが、この資料11のA案、B案、C案、D案を図示したものが、お手元の図でございます。資料11戻って、○の下に※が2つ付けてございます。今、申し上げた@〜Bまでの観点のほかに、※1、※2のような観点もあるということを補足しております。※1は、もし@の目的を限定しないということにした場合には、寄附行為者のあらゆる意思に拘束力を認めることになりますので、財の固定化の懸念が大きくなるのではないかと。そこで目的を限定しない場合には、財団の存続期間を法定することを検討することも考えられるのではないかという観点でございます。
 ※2は、財団を構成する財産に関する情報を開示する規律をも組み合わせることが考えられるのではないかという観点です。
 いずれも図の中にも盛り込んでおりまして、目的の下に「有」「無」と書いてあるのが存続期間の観点であります。図の右端の方に「情報の一般公開」とある部分が※2の部分であります。各案の中身について御説明をいたします。
 まずA案です。@目的は限定しない、A最低基本財産は不要、B法定の機関は理事のみとするという考え方であります。@の目的を限定しないということですので、法定の存続期間を検討してはどうかというふうに考えております。
 ※1でありますが、A案に立った場合、寄附行為者の意思の尊重ですとか、財産処分の自由という観点からはどうか、これは最も広がるんではないか。ただ、財の固定化の観点からは、存続期間を法定すべきではないかということを書きました。
 ※2ですが、制度創設の意義、理念については、目的を限定しないということになりますと、純粋私益のみならず、家族世襲財団も可能ということになり得るかと思いますので、前回も制度創設の意義、理念の希薄化という御指摘があったとおりであります。あと、基本財産の額が実質1円の財団、これを以下「1円財団」と言いますが、そのおそれですとかガバナンスの脆弱性という問題も残るのではないかという懸念もございます。
 続きましてB案ですが、@目的は限定しない、A案と同じです。他方A最低基本財産は必須とし、B評議員会を法定するという考え方はどうかということであります。
 ※1、※2は、今、A案について申し上げました観点が、それぞれどうなるかということを記載したとおりでございます。
 おめくりいただきまして、C案でありますが、C案は今度は@目的を他益等に限定してはどうかという案であります。
 引き続きまして、A最低基本財産は不要、B法定の機関は理事のみとするという考え方であります。
 この考え方に立ちますと、※1、2、3で記載しましたとおり、先ほど述べた5つ、6つほどの観点について、それぞれの評価が可能であろうと思います。
 1点付け加えますと、※3の後段でありますが、目的の限定という部分について、準則主義を前提といたしますと、それを実効的に担保することができるのかどうかという点も前回御指摘があったところかと考えております。
 D案でございますが、@はC案と同じです。目的は他益等に限定すると。この他益等の中身が、C案も含め問題となるとは思うんですが、何らかの標準で限定を設けるという程度の御提案であります。抽象的に言えば社会的に何か意味のある目的に限定しようかという意味であります。A最低基本財産が必須とし、B評議員会を決定すると。一番懸念に配慮して、財団制度の規律を重くする案でございます。
 ※2に書きました点は記載のとおりでありまして、※2の部分もC案の※3と同じでございます。
 最後に参考として、ドイツの財団法人制度と、現行日本民法上の公益財団法人について、今、述べた観点がどのような規律になっているかを御紹介させていただきました。ドイツの財団法人にあっては、設立について州の認証が必要とされておりますところ、@目的は限定しないということであります。A基本財産の額に関する定めはないわけでありますが、ただ認証主義ということもありまして、実務上約五万ユーロの基本財産が必要というふうにされております。
 B法定の機関としては、理事、理事会でありますが、実務上は評議員会を置くことが多いということであります。なお、法定の存続期間の定めはないということです。この点につきまして、お手元にWG参考資料5を配布させていただきました。これは、当室において在外公館を通じてドイツの関係官庁に照会した結果をとりまとめましたものです。中身については、必要に応じて御紹介をさせていただきたいと思います。
 最後の日本民法にあっては、という部分は、もう御案内のとおりですが、主務官庁の許可を前提に「公益ニ関スル」と書いてある条文を公益目的に限定すると解釈されており、基本財産は指導監督上必須となっており、評議員会についても指導監督上原則として置くということになっております。
 以上であります。

○ それでは、資料11について御議論いただきたいと思いますけれども、前回財団法人の在り方についていろんな御意見が出ました。ここでは、必ずしもA〜Dという形で限定してというか、この中からどれかを選べという趣旨では勿論ありません。ただ議論をしやすいように少し整理したものでございます。いかがでしょうか。
 目的の限定の辺りからが議論しやすいと思いますので、そこら辺から議論いたしますと、この会議の中で、私も申し上げましたけれども、家族世襲財産のようなものをつくるために財団法人を設立できるというのは、適当ではないのではないかという議論がなされてまいりました。ただ、何が問題なのか、考えておく必要がありそうです。諸外国では、先ほどの事務局の御説明にありましたように、たとえばドイツでは家族世襲財団を認めています。そうすると、日本でもあまり神経質に規律しなくてはいいのではないかという考えもありうるかもしれません。
 さらに家族世襲財団を問題視するとして、そもそも家族世襲財団というのは一体何なのかと、どんなものが家族世襲財団として不適当なのか、許される非公益の財団と不適当とされる家族世襲財団の境界線なかなか難しいのかなという感じがしているんです。後でもし必要であれば、事務局の方で具体的にどんなものが家族世襲財団であるかということを御説明いただけると思いますけれども、家族世襲財団のイメージが湧かない。
 今、問題としているのは社団法人と違って財団法人ですから、構成員がいるというわけではないので、その構成員が家族に限られているということで問題になるわけではない。例えば、私に少し資産があって、自分の所有している建物とか土地を残そうと考えて、これを拠出して財団法人を設立すると、どうなるんでしょうか。財団法人に帰属したこれら財産を私の家族が使えるという内容の寄附行為をつくり、これに従って運営されていく財団が、家族世襲財団の1つの例かもしれません。しかしこのようなものが家族世襲財団であるとすると、家族世襲財団とそれ以外の財団との区別がむずかしい。特定の範囲の者が事実上の利益を享受すること自体は問題ないのですから、家族の範囲で共通の利益を追求する財団は幾らでもつくれます。適当でないと考えられる家族世襲財団との区別が意外と難しいのかなと思います。特に準則主義の下でやるとなると、意外と難しいということがあるかもしれません。こんなことを考えていますが、どうでしょうか。

○ 今のお話の中に、2つの問題が含まれていると思うんです。1つは、そもそもいわゆる家族世襲財団を許容すべきかどうかという点。もう一つは、仮に許容すべきでないという判断に立ったときに、実効的に排除できるかという点。どうもこの2つのレベルの問題が入っているかと思います。
 最初の許容すべきかどうかについては、どういう弊害があるのかということで、税のことなどは税務当局の方でお考えいただくとしまして、あるいは執行逃れというのも一般的なことだと思いますが、恐らく相続法秩序との関係をどう考えるのかということだろうと思います。
 とりわけ、本来相続によって分配されるべき人から奪ってしまうおそれがあると。寄附行為で、特に非嫡出子などを排除するという目的で利用された場合に、遺留分減殺というのが一体どの程度実効性があるだろうかということがある。
 もう一つは、もうちょっと一般的なことですけれども、家制度につながるのではないかといった懸念があると。そんなのが理念的な面での問題かと思います。
 今度は、実効的に限定できるかということですが、難しいというのはおっしゃるとおりでして、どのレベルで抑えるかという問題だと思うんです。例えば、目的にあからさまに書くことはできないというような形で決めておいて、それで後で何か問題が起きたときには、そのレベルで解決するというのが1つですが、恐らくそれは実効性はなかなか担保しにくいと思います。それでもいいんじゃないかというのが、1つの考え方だと思います。なぜかと言うと、それによって理念を打ち出しているということが言えるかと思います。
 もう一つは、もうそこのレベルはあきらめてしまって、例えばガバナンスであるとか、あるいは情報公開といった面で、家族世襲財団のためには使いにくいような制度設計をしておく。そのことによって、裏から本来そういうものは目的としていないんだということをうたっておくということが考えられるかなと思います。ですから、どうも2段階の問題を検討すべきかなと思いました。

○ どうぞ。

○ 家族世襲財産の維持というのは、私はなかなかイメージが湧かないんですが、どういう効用があるんだろうと思いますと、何かそれ自体が社会的に意味のあるような財産がありますね。明治時代にできた家とか、そういうものが適当に子孫によって、子どもたちによって切り売りされてしまうのを防止しようとか、それをそのまま維持しておくことに文化的な意味があるとか、そういうことは恐らく所有者としては希望するということはあると思うんです。
 そういう場合に、税の問題がどうなるかというのが、おっしゃったように大きな問題だと思いますけれども、効用自体は環境の維持にも役立つかもしれないし、幾つか考えられるような感じがするんです。そうすると、それは恐らくは公益的財団と紙一重の関係になっていくのかなという感じもするんですが、ただ公益を目的としない、当面はしないということであると、そういうのも全然マイナスばかりでもないかなという感じもしながら聞いていたんですけれども。

○ どうぞ。

○ 1つ補足させていただきますが、恐らく正常な形態というのはそうだと思うんです。例えば、自分の裏山を公園として開放しておくとか、あるいは、今おっしゃったような文化財的な建物を維持するとかあると思うんです。ただ使い方によっては、利用者を限定して、一族だけが利用できるといったように使われたりということもある、あるいは、1つの家族の中にたくさんの財団をつくるということも、制度上は可能になってしまうと、そういった本来の目的外に使われるという懸念を、どの程度考慮するかということだと思います。

○ 仮に社団法人に寄附した場合、全く同じことができると思います。相続法秩序の観点から、財団のときには目的を限定しようという御趣旨だと思いますが、そういう考え方を推し進めると、社団についても一緒になるのではないでしょうか。

○ それは社団に限らず、寄附自体の問題だと思いますから、それは一般的なことだと思います。

○ そうしますと、何で財団についてだけそういう配慮をしなければいけないのか問題となりますが。

○ その財団をつくることによって、まさに家族のための財産を相続外のところで恒久的に維持することができると。その問題なんです。寄附の場合ですと、それは遺留分の減殺によって、一般的な贈与として考えていけば足りると思うんですが、寄附行為も贈与にはなると思うんですけれども、1年よりも前の寄附行為を、どうやって減殺できるんだろうかということを考えてみると、なかなか難しいんじゃないかという気がします。

○ 遺留分の減殺請求権に引っかかるようなものは、財団法人の設立であっても同じように減殺に服させればいいんだと思いますけれども、社団法人と財団法人の違いがもしあるとすれば、たとえば、自分の住んでいた家を永久に保存させようという目的のために財団法人を使うときに、寄附行為の変更の手続ができないようにしておくと、それで財産を永久に拘束することができます。しかし、社団法人の場合ですと構成員がいますから、構成員の気持ち次第で保存するはずであった財産を売ったりすることができる。財団法人の方が設立者の意思を非常に強く出して、財産を拘束することができる。

○ その程度ですか。

○ その程度ですが、どうでしょうか。

○ おっしゃったように、問題はかなり共通していると思うんですけれども、あとあえて言えば社団の場合そういう人の団体の活動を活発化するという理念の説明ができると思うんですけれども、財団の場合はなかなかそういう理念の点での説明がしにくいところが1つあります。
 あと、私は家族世襲財団ということよりも、むしろ課税逃れですとか、強制執行逃れですとか、更に言えばマネーロンダリングの手段に使われるといった問題の方が大きいのではないかと思います。やはり別法人の形態になりますと、さっきの遺留分減殺みたいに、それなりの手当はないことはないけれども、それを使うことは容易ではない別法人となることによって、実際上例えば強制執行が難しくなったり、マネーロンダリングに使われたりとか、そういうかなり一般的な弊害が出てき得るという点に問題があるように思います。
 ですから、前に中間法人のときに言ったように、広い意味での法人格の濫用的なことを抑えることも考えておかなければいけないのではないかという問題だと思います。

○ 確かに、財団法人に限らず、1人社団法人がつくれるとなると、社団でも全く同じことができてしまうんですね。

○ ですから、両方に共通する問題だと思います。

○ もう一点は、家族世襲財団を認めないために、目的で限定するという具体的なやり方のイメージがなかなかできないんですが。

○ なかなか難しいですね。

○ 具体的にどういうやり方で限定するんでしょうね。

○ 恐らく家族世襲財団という言葉は使えないでしょうから、専ら私益のためというような、もうちょっと広めになるのかなという気はしますけれども。

○ 中間法人も共益と言いますが、あれは社員に共通の私益であれば共益になりますね。そうすると、私益がだめだという場合のその私益というのは何かということが問題になりますね。

○ 委員は、私益、他益という言葉を使いましたが、この概念が財団法人の場合にどういう意味を持つのかが難しいですね。

○ そうですね。恐らく登記の段階での目的の限定性ということですと、非常に難しいんだろうと思うんですが、ただ理念のレベルでそういう私益はだめだという判断を取れるかどうかということだと思うんですけれども。

○ 家族のためというのは私益になるんですか、他益になるんですか。

○ 私は私益の方に入れているつもりです。

○ 信託では他益になりますから違いますね。

○ そうですね。ですから、登記のレベルで限定することが技術的に可能かどうかということと、それからそれが不可能だとして、さっき申し上げたことの繰り返しになりますけれども、制度設計の上でそういったものを本来は目的としていないんだという前提で進めていくかということなんですが、ただそもそも理念の段階で、それでいいじゃないかという御意見であれば、もうその後のことも考える必要がないということになると思います。

○ そうですね。登記可能性の他に法的な効果を持たせられるか。目的を外れた場合には、その財団の行為が否定されるとか、そういった効力を認めることによって設置を事実上制限できるかということを考えてみても、それはなかなか難しいのではないかと思いますけれども。

○ 実効的に担保できるかということと、目的に書けないということとは別じゃないでしょうか。例えば、こういった目的だと登記は受け付けられないということは、何か規定できそうな感じがするんです。ただ、それを実効的に担保できるかというと、恐らく難しいだろうということだと思うんですが、目的を書くことの限定も不可能だというお考えですか。

○ 書いても、それに何らかの法的な効果を与えられるか。あるいは、法的な効果が得られるか。

○ ですから、少なくとも目的には書けないという効果ですね。

○ 登記事項の目的にですね。

○ そうすることによって、この制度の本来の趣旨というものは、そういうものは除外しているんだということを明らかにするという効果なんですが。

○ 解散判決請求権や解散命令なんかにも結び付くということをお考えでしょうか。実態が全く違った運用がされているんですから、そういうこともあり得るかもしれないですね。

○ 信託でも同じことはできるわけですね。信託の方は制約がないときに、財団法人についてだけもし制約を課するとすると、それはどういう理由なのか。

○ それは今日の御提案でも出ていますけれども、存続期間との関係もあるかもしれません。信託の場合ですと、私益の場合ですと、永久というのは認められないという考え方があると思いますが、それをこっちに持ってくるかということかもしれません。

○ 私益と他益とまたちょっと切り口が違いますが、財団法人の場合の営利・非営利という概念が、私益・他益とどういう関係になるのかというのが気になっているんです。よくわからない点もありますが、財団法人の場合には構成員がいないので、社団法人におけるように、構成員に利益が分配されるのが営利だとすると、財団法人の場合には営利というのはおよそあり得ないのです。仮に家族にお金を給付するということがあっても、あるいは何らかの経済的な利益を与えることになっても、これは財団法人の場合には、公益法人がどこかに助成するのと同じようなもので、当然にはそれは営利目的の財団ということにはならないですね。財団法人の場合に、この問題をどう考えるのか。それと私益・他益との関係をどう考えるかという問題がありそうです。

○ 残余財産分配や役員報酬の形で、実質的な利益分配をするということはあり得ますね。

○ それはあり得ますね。そこだけ押さえておけばあとはいいということになりますか。

● 残余財産の分配というのは、最初に出した人、すなわち寄附者に戻すという話ということですね。

○ 例えば、そういう形でやることが可能だと。

● 寄附者でない人に渡すとして、それが寄附者と一定の関係にある人。社員という関係では勿論ないんですけれども、一定の関係にある場合にも戻ると、やはり実質的な利益分配ということになるのでしょうか。そうすると、その一定の関係とは何かということが問題となるのではないでしょうか。

○ あり得ると思うんです。自分の子どもに行くようにしておくと。

● 友達だとかいろいろ考えられると思いますが、その一定の関係とは何かだと思うんですけれども、そういう意味ですね。

○ そこがなかなか難しいところですね。私は、社団法人のときにも、存続中の剰余利益を構成員に分配することは営利だと思うけれども、残余財産の分配というのは必ずしも営利・非営利と直結しないのかなというふうに理解しているんです。財団法人の場合にも、実際上、構成員に相当する者に利益を分配することはありうるので、それは押さえておかなければいけないかもしれない。
 少し話を混乱させたかもしれませんが、財団法人の場合に、営利・非営利という概念とともに、私益・他益という概念もはっきりしないところがあって、そのため、私益はだめだという形で財団法人の目的を制約するのも意外と難しいのではないかという感じがある。

○ ちょっと常識的ですけれども、もしこういう家族世襲財産から成る財団を認めるとしたら、やはり存続期間を設けて、そして公益法人になる準備期間というふうに考えて、その期間内に公益法人の要件を満たして、公益法人にならなければもう期間の到来とともに解散するというふうに考えるのが常識的かなと思うんですけれども、ちょっとよく分かりませんけれども。

○ 本当に公益的な活動をするのであれば、あるいは公益に移行できるものであればそれでいいのかもしれません。しかし、大きな屋敷があって、それを保存することは緑という観点からは多少公益的な側面があるとしても、そこに家族が住んでいられると、公益に移行できるかどうか。

○ 住んでいられるということがね。

○ 問題になりますね。周りの人たちも入って見に来ることができれば、庭を見ることはできれば多少公益的なところがありますが、家族はそこに住んでいるということになると、なかなか現在の指導監督基準等では公益とは言いにくいところがありますね。

○ 現在はね。だから、例えば幼稚園にするとか、何かそういう形で公益法人に移行するという存在としてのみ認めるというのであれば、それほど弊害がないかもしれない。ただ、実効性がどこまであるか、きちんとそうするかどうかということも問題だと思います。

○ そうですね。結局、問題は、公益まで行かない、あるいは移行する気はないというような財団法人があり得るわけですが、これをどうするかです。公益ではないけれども非営利だという財団を認めることにしてよいかという問題だと思います。一番極端なことを考えれば、純粋に私的な利益のために使う財団というものもよいかということです。

● 1点よろしいですか。先ほどの、相続法秩序に反するようなものはまずいのではないかということの確認でありますが、例えば非嫡出子を排除するような財団をつくったとすると、恐らく一番ひどいものは公序良俗に反するんだろうという考え方も、例えば排除された者がその財団の設立は、相続法をないがしろにするものだからおかしいと訴え出て、裁判所が民法90条の話で議論することもあり得るという前提で、ただそこに至る前に制度の問題としてやはり懸念があるんじゃないかという御指摘ということでしょうか。

○ おっしゃるとおりです。

● 90条があるから大丈夫だとは、なかなかいかないですね。

○ 勿論そういう考え方もあり得ると思いますけれども、存続期間にしても、制度的に存続期間何年と決めるのはなかなか難しい。法律でえいやと決めてしまうこともありますけれども、それも合理的な期間の設定が難しい。そこで、そうではなくて公序良俗で判断するということも考えられますね。現に日本の民法の体系でも、すべての権利について存続期間の上限を定めているのではなくて、上限があるのは一部ですね。ほかの権利についても、存続期間上限を考えるべきだという議論がありますが、それは公序良俗で判断しているんじゃないでしょうか。

○ 今、おっしゃった相続秩序との関係での公序良俗というのは、あり得ないお話ではないと思うんですけれども、例えば寄附行為の定めを90条のみでコントロールしようとするときに、当事者は、恐らくあからさまに90条に反するような書き方はしないんだろうと思うんです。理事には絶対何々家の嫡孫しかしないという含みはあるんだけれども、嫡孫しかしないとは書かないで、だれだれが指名した者とか、評議員会が選出した者とか書きますので、実効的な90条によるコントロールができないということは認識した上で、しかし理論的にはあり得るということを確認し、それともう一つ設立行為、それ自体に対する遺留分減殺請求権による攻撃というのも、実効性がどこまであるかわからないけれども、理論的にはあり得るという2点あるということでしょうか。

● 失礼しました。よくわかりました。

○ 今の点は、目的の限定と存続期間の話に関係していますけれども。

○ 存続期間について、さっきのお話なんですが、これは非営利の財団法人一般についてという御趣旨ですか。それとも、その中の特定のものについてという御趣旨ですか。

○ 特定のものについてという前提でお話ししていたんです。家族世襲財産のことを念頭において。

○ そうしますとやはり特定のものの線引きという、やはり同じ問題が出てくるということですね。

○ はい、そうですね。

○ 一般について、存続期間を設けるということはいかがでしょうか。

○ 私は、それは非営利、社団の場合には設けないわけですね。そうすると、一般的には設けなくていいのではないかと思いますけれども、設けないと何か弊害がありますかね。

○ 特定のものについて設けるということになりますと、結局線引きの問題があるということが共通する問題としてあると思います。

○ それはそうですね。

○ ですから、先ほどのお話なんですけれども、1階と2階を関連させたお話の部分はすごく魅力的だと思って伺ったんですが、だとすると1階のところは目的は限定しないで存続期間による限定という歯止めをかけた上で、2階に上がれるものはおっしゃったように準備期間を経て、2階に上がったならば期間のタイムリミットの歯止めが外れるような組み合わせはあり得るのかなというふうに思いました。

○ そうですね。そう考えた方が一貫していると思います。

○ そうすると、間接的に公益目的でないと財団はできないということになりますね。

○ 社団の場合にはそこに構成員がいて、社員が1人のケースをお上げいただくとちょっと議論が難しいですけれども、普通には複数の構成員がいて、相談しながらやっていくんだからノータイムリミットでも構わないけれども、財団のときには設立者の財産処分という特殊なものだから、一般的には期間の限定があるものとし、公益性のチェックを受けたものは延ばしてもらえるよという辺りはどうかなという気持ちです。

○ その場合の存続期間というのは、法定の強行規定ということになるんでしょうね。

○ そこは御議論いただく必要があるんじゃないでしょうか。現行法ですと寄附行為で財団法人の存続期間の終期が決められるという規律しかなくて、あれと同じものを入れるという意味で、法定の存続期間というのをおっしゃっているのか、あるいは法律で一律に決めるのか、あるいは法律で上限を決めてその範囲で決めることにするのか。上限を決めずに現行法と同じ仕組みのスライドだとすると、例えば999年の財団法人をつくるとか言われると、それは期間を限定したことの意味が余りないわけなので、その辺りは議論の必要があるんじゃないでしょうか。

○ 今は余り必要ないのかもしれませんが、前に中間的な財団法人の議論をしたときに、資産流動化の器として使えるのではないかという話もあったと思いますけれども、このような目的の財団法人は公益には勿論上がれないが、社会的には意味があるといえるか。言われたように、非営利の財団というものには意味がないのか、なお意味があると考えるかという問題は議論を詰めておかなければならない。

○ 証券化のためだけでしたら、期間限定があっても、実際には使われるということになります。

○ 長い期間であれば、まず大丈夫かもしれませんね。

○ 存続期間に関連する問題で、少し考えていることをお話しさせていただきたいんですが、存続期間を設けたときに、それが満期になった後どうなるのかということですが、私はそこで財団法人に備え付けられているガバナンスの機関というか、それの判断で、もう一度同じ趣旨で別法人を設立し、実質的には続けることはあってよいというように考えます。
 勿論もうそこで目的とか事業とか出資を終了させてしまうと。それで、別の使い方、主体に帰属させるという方法もあり得るけれども、そこが評議員会なり理事会なり、あるいはその組み合わせを自由に判断できるというところに、法定の存続期間を定める意味があるのではないかと思います。そうすると、何のための法定の存続期間かということが、私のように考えると1つの趣旨がクリアーになると思いますが、財の固定化に対する対応措置であって、財の固定化というのは、次のように考えるべきではないかと思います。財団をつくらなくても、あるファミリーの相続財産で続いていて、取引の対象にならないという財産は幾らでもあり得る。その家族の経済的な力と、財産に対する、どういうふうに財産を使おうかという判断により、全然取引の場に出てこないことは幾らでもあり得るだろうと思います。
 それを、しかし財の固定化と言って弊害だと言わないのは、いつでも、実質的に処分をできる立場にある人たちが処分をしようと思えば、3代前のおじいさんが、あるいはひいおじいさん、ひいおばあさんがこうしたいと言ったとしても、それをそのとき生きている人たちで変えられるということなんだと思うんです。
 財団法人にすると、寄附行為の変更の程度の堅さにもよるのかもしれませんが、もう亡くなっている数代前の人の意思というものを今の生きている人が支えることになります。それを排除するために期間を区切れば、存続している間は寄附行為による拘束というものがある程度強いものであっても、30年とか50年とかという期間を、私は何となく想定しておりますが、それを経るごとに寄附行為というのを全面的に見直すことができるというものではないかと思います。

○ 確かに財団法人と1人社団とを比較すると、その点が違って、ほとんど機能は同じですけれども、1人社団はやはりその人の判断で処分ができてしまうんですね。そのようなことができないように拘束するのが財団法人で、実際上財団を牛耳るのは1人であっても、処分できないようにしてしまうので、硬直化が生じるが、その硬直化を避けるのはその1つの考えですが、期限がくると一旦財団法人がそこで消滅ということになるのでしょうか。

○ 終了して、それで財団法人が寄附行為をするのではないでしょうか。

○ 新たに。

○ はい、旧財団法人が新財団法人を設立、寄附行為をするというようなイメージで、この存続期間が設けられたときに、同じ趣旨で使いたいというふうに考えたときには、そういうことがあり得るのではないかと思ってます。

○ 税の問題とかそういうものも余り生じませんか。

○ それは、相続税みたいなところで課すというのは、あり得るのかもしれないなと思います。

○ 相続税ではなくて、いったん消滅する財団を存続させるときに何か税がかからないかという心配です。それはそうと、すべての財団法人に存続期間をかぶせるのはどうか、本来は、もっと永続的に使いたい、例えば、学会のような財団についてまで全部規制をかぶるのはどうかという問題があります。

○ その延長の方法は寄附行為の中に書いてあるのに従うのでしょうか、法律上一定の方法を規定しておくのでしょうか。

○ 要するに、解散のときの財産の処分の一方法として新たに財団をつくる。

○ そういう方法ではなく、財団の存続期間は限定しないで、しかし、一定期間が経過したときには、拘束されている財団財産を処分する権限を与えるのはどうですか。

○ 実質的には同じようになると思います。

○ でも、その延長なり処分をする権限を法律で理事会に与えるのですか、それともその延長を一体だれが決めるんですか。

○ 延長というか、ですから法定の存続期間を定めたら、最長でも法定の存続期間を上限に、いったんは終了させないといけないと、その終了させるときの残余財産の処分の方法として、その財団における意思決定をできるものがどうするかを決めるというものです。

○ ということは、やはり寄附行為に書いておくということですか。

○ 寄附行為に書いても、書いてなくてもできるのではないでしょうか。

○ もう法律でそういうふうに決めてしまうということですね。

○ 法律で決めてしまうんですか、それによって随分意味合いが違ってくると思いまです。

○ ですから、帰属権利者とは呼ばないのかもしれませんが、信託の帰属権利者のようなものがいて、その者に最後の財産を与えなさいというふうに寄附行為に書いてあれば、それは守らないといけないということです。そうすると、それで財産の固定化というのは、そこで終了するわけです。

○ またそこで新しく財団法人設立するのと同じようなことになるわけですね。寄附行為で書かれていた残余財産の帰属者が、再び財団法人を設立するのとほぼ実質的には同じことですね。

○ そうですね。寄附行為で帰属権利者を必ず書かないといけないでしょうか。その終了したときの理事会なり評議員会なりの判断で帰属権利者を決めるというものです。

○ そういうふうに書いてある場合はそうですね。そのときには寄附行為で決まってくるということになるわけですね。

○ そうです。

○ 寄附行為で決まるのでしょうが、今の意見は、寄付行為には書いてなくても一定期間経てば財団法人はどっちみち終了するので、その時にだれが判断するかが問題となるので、それを寄附行為に書いておくというぐらいですかね。あるいは、財団存続の手続をも書いておくことになるでしょうか。

○ ただ、全く委ねられているというよりは、終わったらAさんに、あるいは終わったらこういうふうに使いなさいと書いてあると、それには拘束されると、しかし実態的な処分方法というか、処分の趣旨は決められてなくて、だれが最後残余財産を処分するかさえ決めておけば、もう一回新しい財団をつくるのと同じ趣旨のものをつくって続けることができるということです。

○ ただ、実質上は前の財団と新しい財団は同じですが、形式的には法人格が別なので、法人格が承継されるという形の法律にしておかないと困らないか、税の問題もあるし、いろんな資格だとか、許認可だとかいろいろ受けていたときに、全部引き継がないといけない。

○ その2段階論というのは、第2の寄附行為についても第1の寄附行為で限定されるということになりませんか。つまり、期間が満了した財団法人が、新たに財団法人をつくるという場合に、それは第1の寄附行為の目的の範囲内でしかできないということになりませんでしようか。

○ そうですね。目的の範囲内というのは、寄附行為に目的の範囲内で終了したときの財産処分を決めようとすれば、そこで決まるということではないかと思います。したがって、それは寄附行為で自由にすれば自由も可能であると思います。

○ お話を伺っていて気が付いたんですけれども、この期限付き財団の制度を実効的なものにするのには、恐らく最初の方の寄附行為の中身、残余財産の処分の仕方について、何らか強行規定的な準則を法律に置いておかないと、逆に骨抜きにされる恐れがございまして、つまりこの財団法人は50年後に終了するけれども、そのときは残余財産は必ず類似目的のものに使わなければいけないと書かれてしまうと、結局それは期限が来たときに、また類似の財団をつくって、それに寄附する以外に方法がないことになってしまいますので、固定化がやはり避けられないことになりますから、おっしゃった理念を貫徹するのには、あらかじめ法律で寄附行為の残余財産処分のところは、その時点の世代の人が自由に決められるという内容のものでなければいけないでしょう。それは最初の寄附行為の認証を与えるときに、準則主義でチェックできるような内容のものを強行規定的に入れておく必要があって、またそれは可能であるような気もするんですけれども、そうすれば御懸念に対する一定の回答にもなるんだろうという気がしました。

○ 財団法人をそもそもどういう理由で認めるかというところも絡むのかもしれませんが、積極的な意味づけをした場合、何か利点があるということで法は財団に法人格を与える。そういった場合に今御議論になっているのは、期限を付ける、法人に寿命を設けてしまうという発想ですね。ただ、その一定の期間が過ぎたら必ず死んでしまう法人にするという意味ですが、その趣旨は、設立者の意思、財に対する拘束する意思が余りにも長く続くことはよろしくないという発想からだと思うんですが、その設立者の意思が財に対して拘束することを余り長く認めてはいけないということが、なぜ法人を殺してしまうということにつながるのか、よくわからない。法人を殺すまでもなく、設立者の意思の拘束力が10年なら10年で終了し、あとは別の理事等に判断権が移転するという構造を取れば、別に殺す必要はないはずというふうに思うのです。目的と手段との兼ね合いも考えなければいけないと思うのです。それは、最初に申し上げた、そもそも財団というものをどういう理由で認めるのか、意義があるのならば、極力殺さない方向で考えるべきだろうと思うんです。

○ 殺すという意味は、法人格が消滅するという意味ですね。

○ 寿命を最初から設けておくという意味です。

○ ですから、おっしゃるような形であろうかという気が私もしたのが、ひょっとしたらこの財団の存続期間に終了による解散と言っている話と、寄附行為の変更を一定期間後にどれだけの幅で許容するかという話は、非常に実質的には連動した論点で、技術的にどっちを取るかというふうな形にアプローチが接近してくるような気も、お話を伺っているとしますね。

○ 家族世襲財団のような、何となく余り望ましくないタイプの財団を念頭に置いて議論すると、一定期間で財団が消滅していいという議論になるかもしれないけれども、今、言われたように、財団法人自体にはいろいろ社会的な効用があるという前提で考えれば、一定期間で必ずいったん終了するという規制は少し行き過ぎではないかという問題があるのではないかと思います。
 そういう意味では、非営利の財団法人がどんな場合に使われるか、という点についての認識が再び重要になってきます。どんなところに意義があるのか、何度も議論して、ある程度は理解しているつもりだけれども、まだ我々の中で余り明確なイメージになっていない。
 存続期間とか、目的の問題以外に最低基本財産とか、ガバナンスとか、それから開示の問題とか、いろんな論点があります。これらの論点の中にはある程度合理的な組み合わせというものが考えられるものもあるかもしれないが、それぞれの問題について個別に判断していっても構いません。今日御用意した資料で御議論いただければと思います。

○ ここでは税金の問題は議論しないことになっていますけれども、相続税、贈与税の回避のためにこういう財団は大いに使われることになるんじゃないかと思います。
 現行法の相続税法66条でしたか、公益法人自体に相続税や贈与税をかけるという制度があるんです。恐らくは、非営利の財団法人をつくると相続税法の方をもっときちんとして、租税回避ができないというか、相続税や贈与税をきちんと取るのと同じような効果が出てくるような規定を設けることを税制では考えるのではないかという感じがいたしますけれども。

○ 御質問ですけれども、相続税に関しては、財団法人が実質的にその相続人の利益になっているという場合には、相続税をかける方法を考えることになるんでしょうね。

○ そうです。それから、相続人というか、寄附行為をした人の家族がそこに住んでいる場合は、住んでいる家族に贈与税がかかるということになると思います。公益法人の場合には、家族にかけることもできるし、財団にかけることもできるというふうに現行法ではなっているんです。もともと相続というのは個人間の問題で、贈与税は相続税に代わるものですから、個人が本来は納税義務者のはずなんですけれども、個人に行く利益がなかなか測定しにくい場合には、代わって団体にかけるという制度もあるんですね。だから、そういうようなことを恐らく考えるんじゃないかと思います。

○ 現行法の規定でも大体そうなっているということですね。ちょっとついでにお伺いしたい点があるんですけれども、話は少しずれますけれども、例えば今、その家族が住んでいるということで、その人に対する贈与だということで贈与税を実質的にかけるという話がありました。財団法人の財産である家屋などに、そこに住んでいる人がいても、その人には財産の処分権限がないので、利益を享受するといって処分権のない利益の享受するにすぎないと考えたときに、その場合の贈与も所有権の贈与と同じように考えるんですか。それとも少し所有権よりは少ない利益しか得ていないということで割引いて考えるのですが。

○ それは、ちゃんと家賃を払って住んでいれば恐らく問題にならないと思うんですが、家賃を払わないで自分の財産と同じように住んでいれば、家賃相当額の利益の贈与がある点があるというふうに考えられると思います。

○ 私もついでに1つ教えていただきたいんですが、団体に相続税に相当するものをかけるというお話ですが、それは1回こっきりですか。つまり相続が数次にわたるような長い年月の場合。

○ 数次にわたる場合は、その都度ということになると思います。つまりここで考えているような非営利財団の場合にはですね。営利法人か何かに贈与してしまったり、あるいは財産を移してしまえば、それはまた別で、営利法人の収益(受贈益)として課税することになるでしょうけれども、公益法人の場合でもやはりかけるということはあるんです。

○ 相続以外にも法人の所得の方にして、実質的にそこに利益留保するなどいろいろあり得ると思います。税の他に強制執行を逃れたりするのに使われたり、マネーロンダリング、あるいは銀行口座の不正利用とか、いろんな形で使われるわけです。特に実際会社の設立など、強制執行逃れのために設立されるようなものが非常に多いんです。そういう濫用がいろいろあり得るわけで、租税の方は税法にそれに対する規定を、今、おっしゃいましたように、いろいろ工夫していただけるんですけれども、強制執行等を逃れたり、マネーロンダリングですとか、口座の不当利用等の場合には、それに対応することが非常に難しいんですね。それを考えると、財団の設立が、そういう濫用的なことには使われにくいようにしておくということも、やはり考えておく必要があるんじゃないかと思います。

● それは恐らく作りにくくすることがよい対処の方法だろうと思うんですけれども。

○ 基本財産の要求とか、そういうことがやはりかかわってくるのではないかと思います。

● その額とか、チェックの方法とか。

○ あるいは、定款認証とかですね。

● ただ、思うのは、社団と財団でどこまで、どっちだとハードルを高くするのかもあって、そこはもしかすると社団は理念が強いけれども、財団の理念がちょっと弱いとすると差があるのか、それとも法人格を与える。法人格の与え方の技術的手段としては、人に着目するあるいは財に着目するというような見方をすれば、ハードルは同じであるべきような気もいたしますし、そういう問題があると思います。

○ 理念の書きよう以外のところは、共通するところは多いと思うんです。実際、財団というのは言わば寄附者を唯一の社員にする社団法人みたいなものですね。ただ、違うのは、寄附者の最初の寄附行為を変更できなくて、寄附者が死んだ後もそれがそのまま存続していくという点が実質的な違いかなと思います。

● 寄附行為の変更を定款変更の場合とは異なる規律にしていくと、その違いがどこまで異なるかということだろうとは思います。

○ 突き詰めて言えばそこだけではないかと思います。

○ 執行逃れで財産を社団法人に寄附したり、財団法人に寄附行為で移転したりする執行逃れを防止するという観点から、何らかの手立てが用意されるはずですし、用意しなければいけませんが、それがあれば後は財が行った先が社団法人なのか財団法人なのかというのはそれほど違わないんじゃないでしょうか。

○ おっしゃるとおりですけれども、それを防止する手立てをどうするのかというのが、そう簡単な話ではないと思うんです。

○ 要するに、財団法人の法制の中に組み込むかどうかという問題ですね。

○ ですから、ある程度有用な社団法人なり財団法人であり、濫用目的ではないということが分かるような、何か仕組みは制度の中に仕組んでおいた方がいいんじゃないかという気がするのです。

○ そうすると、また目的の話ですか。

○ 目的で行くか、あるいは基本財産等でいくか。

○ 少し別の話ですけれども、基本財産はやはり財団法人の場合に、何か一定のものを要求するということは、そんなおかしくないわけですが、それでは今の問題は解決しないわけでしょう。

○ 完全には解決しないですけれども、余りにもひどいものに対する対処にはなると思います。

○ 財団法人を使って財産隠しをするのだったら、基本財産のところに財産を出してしまうことで、その目的を実現するのですか。

○ その基本財産をつくるのにコストがかかるというか、そっちの問題ですかね。

○ 基本財産をちゃんと出して、活動しているようなものであれば、これは怪しい法人ではないから構わないだろうという趣旨ですね。

○ 少なくともそういう濫用的なものは少なくなるだろうということです。

○ 私も基本財産の方で健全性を押さえておくというのは、あり得る姿だと思うけれども、財団法人の目的で規制するのは難しいのかなという感じがします。委員の御意見に近い感想を持っていますけれども。
 先ほどから問題になっているように、信託には法人格はないとは言え、実際上は財団法人と同じように使えるわけだし、信託とのバランスからも財団法人の設立範囲の問題を考える必要があります。また、財団法人の効用という観点から考えたときに、社会的に意義がないような、あるいは濫用的な使い方もあるかもしれないけれども、しかし公益法人にはなれないようなものが法人格を取得する手段として財団法人の意味はかなりあるのではないでしょうか。学会などが例として挙げられますが、本当は学会は公益法人になっていいと思いますけれども、会社の従業員のための財産であるとか、もっと狭い範囲の者の利益のために財産を拠出するのは、現状では公益法人になれないのですが、こういうものが公益目的ではない非営利の財団法人を設立して、一定の目的の下で財産を管理、運用するということは、あってもいいと思います。
 基本財産の問題も含めていかがですか。先ほど基本財産についての議論が少しありました。また、1円財団というのはちょっとまずいんじゃないかという議論もありました。

○ 少なくとも、財団法人というのは有限責任ですので、それが担保できるような仕組みは必要ではないかという気はします。財産があって意味のある法人ですからね。

○ これは理念とも関係すると思うけれども、財団法人というのは、前にも申し上げたように、財産を処分、有用な目的のために処分するという点に意義があるとすると、そしてそれが社団法人とは違うところだとすると、1円財団というのは財産処分をしているわけではないので自己矛盾ですね。

○ 基本財産については、今おっしゃったように、1円じゃ足りないという面と、他方で執行逃れという、さっき御指摘になられた部分は、これは多くしても余り効果はないですね。つまり多い方が執行逃れとしては有効なわけですから、最低限を設けても執行逃れについては対応できないという問題は残るだろうと思います。

○ 基本財産の額を設定してもそれだけでは恐らく執行逃れ対策にはなりませんが、拠出された財産の開示を要求したり、財団法人を構成している財産についての開示がきちんとされるということになれば、債権者の方もこれを見て対応することができます。強制執行逃れとの関係で言うと、財団を設立するまでに存在していた債権者については、これは拠出された財産に対して、詐害行為取消権によって理由として取り戻すことができます。何か手当はあるんでしょうね。
 問題は、財団法人が設立された後に発生した債権者にとって、財団は隠れ蓑で本当は寄附者の財産じゃないかと主張する場合ですが、これは法律的に証明が難しくなかなかかかっていきにくいですね。
 似た問題は信託でもありまして、委託者が自由に信託を撤回できる撤回権というのを付けた信託というのがあって、これは遺言の代わりに使うことがアメリカではあるんですけれども、信託は有効に設定されているので、財産の名義は委託者から移転しているんです。ですから、信託設定後に発生した債権者は、本来であれば信託財産にはかかっていけないんです。しかし、撤回権が付いていると委託者はいつでも自由に信託財産を取り戻したり、あるいは変更権といって信託財産の受益者を自由に変えられる。そういう自由な処分権限が委託者に留保されているときには、委託者の債権者は信託財産にかかっていけると考えられています。信託の効力を否定するわけではないけれども、委託者の債権者は必要な範囲でかかっていける。そういう判例法なり法律がアメリカにはあります。これと似た考え方が財団法人についてもできないわけではない。

○ あと基本財産の方で抑えることを、そういう執行逃れはできないという御指摘あったんですけれども、執行逃れの財産を資産として計上しようとしますと、現物出資の形でやることになりますので、少なくとも現行商法のような設立手続をとりますと、裁判所による検査役の調査が必要になってくるものですから、実際上そういうことに使われにくくなるという面が大きいのではないかと思います。

○ 従来からその問題は抑えられるんじゃないかというお話ですが、詐害設立は。

○ それは難しいんです。詐害行為取消権で一体どこまでやれるのか、あとはもうそもそも法人の設立そのものを取り消す、設立取消の訴えを起こすか、そんなことになってきていまして、非常に債権者としては難しいです。今まで実際にそういう事件もかなり起きています。

○ 影響が大きいですね。あとで取り消されるにしても、設立された法人もいろんな活動をしていたりしますからね。

○ ですから、実際には商法第26条を使ったり、あるいは法人格否認の法理を使うとか、そういう形で、いちいちフォーマルな詐害行為取消や設立取消の手続が非常に面倒なものですから、そういう形での裁判が非常に多くなってくると思います。

○ そういうのがうまく使えれば、財団法人の法律の中に特別なことは、本当は設けない方がいいと思いますけれどもね。法人格否認の法理をもっと発展させていただくといいのではないですか。
 それはともかくとして、基本財産の問題ですけれども、一定額を要求するのはよくないという御意見はあるんでしょうか。どんな額にするかについては基準が難しいと思いますけれども。

○ それを見ると、ドイツは明らかに会社の場合の資本金と同じ額を要求しますね。5万ユーロという額ですね。会社の最低資本金の額です。ですから、むしろそちらのバランスを考えております。

○ 有限責任の享受という観点だけで考えると、非営利社団法人について、最低基金制度のようなものがない場合に、財団法人について要求するということがどうもうまく説明できないというふうに思います。しかし、やはりその財団というところから説明をし、おっしゃったように、財産処分の一方法である、あるいは財産に着目し、その法人格を追加して与える方法であるという、かなり抽象的なレベルの議論ですが、そこに立ち戻りますと、やはり一定の金額を持ったものというふうに考えてよいのだろうと思います。したがって、非営利社団法人について、仮に最低基金というものがない解決になったとしても、非営利財団法人については設けるという解決はあって良いと思います。そのときの目安ですが、現行法の最低資本制度、最低基金制度という考え方の金額というのが、一応目安になるのではないか。300万でしょうか、というふうに考えます。

○ 理屈の問題と、それから実際上どのぐらいという話ですけれども。

○ その理屈の方はなかなか難しいような感じがしますね。財産の集合体だからというんだったら、別に幾らでもいいじゃないかということも出てきそうな感じがしますし、設立、濫用の防止ということが、中間法人法のときも議論されたわけなんですけれども、それを表に出すのがいいかどうかということもあると思います。
 ただ、常識的には何らかの最低額があった方がいいだろうなという感じはするんですけれども、その説明が結構難しいんじゃないかと思います。

○ 財団法人としては、財産を基礎に活動をするのですから、その法的活動ができるような額が必要だということになるでしょうか。しかし、どのくらいの額だと財団法人としての意味のある活動ができるのか、そこが難しいですね。額はなかなか決まらない。言われた300万というのは、どっちかというと有限責任との関係で決まる額だから、私のような考え方をすると、そこに結び付けるのが理屈として難しいところがあります。
 理屈の問題はもう少し考えることにして、基本財産について最低額というのがあった方がいいということについては、大体よろしいですか。もしこの点についてある程度合意ができるというのであれば、そういうことで進めていきたいと思います。
 先ほどの財団法人が認められる目的に関しては、制限するのはなかなか難しいだろうという意見と、やはり何かの制限を設けるべきだという意見に、二分されているようですけれども、方向性としてはどうですか。

○ これは社会的に新しい非営利財団法人が、どういうふうに評価されるかということとの関係なんですね。いい方向に使われればよろしいですけれども、マイナス面に着目されたときに、どうやって説明するのかということだと思います。先ほど信託でできるんじゃないかというお話もあったんですが、信託法の方は信託の終了が幾つか定められていたり、あるいは私益信託の場合には、期間の限定をすべきであるというような議論もあるところですから、そこを全く同じとも言えないんじゃないかという気もします。
 ですから、そもそもこの非営利財団法人制度が、どのように多くの人から受け止められるかということも聞いてみたいと思います。

○ わかりました。一応ここは三様の御意見があるということにいたしましょうか。ガバナンス、開示のところはいかがでしょうか。

○ ガバナンスは、評議員会制度を設けるか設けないか、その違いだけですかね。

○ そうですね。

● ペーパー上はそうなっております。ただ、監事も本当は入れるべきだろうと思います。念頭においておりますのは、評議員会を置く場合には、恐らく監事を置いた上更にということになると思います。両極端の考え方は、理事だけと、つまり監事が任意というパターンと、理事、監事、評議員会が必置というパターンだと思います。ただその間だって十分あり得るとは思いますが、資料上のイメージとしては、両極端を考えております。

○ 各国の制度でも、結局そんなパターンしかないですかね。

● はい、承知しておる範囲では。

○ いろんな組み合わせはともかくとして、考えられるガバナンスの機関としては、こんなところでしょうか。

○ ドイツですと認証制になっているようです。非営利財団で準則主義というのはあるんでしょうか。

● アメリカの財団制度がいま一つよくわからないんでありますが、財団法人制度は存在しないんじゃないかという反面、社員が存在しない法人もあるということのようでありますので、そこに財が出されれば、実質的意義において余り財団法人と変わらないような気もいたします。それは準則と聞いております。ただ、大陸法で言うところの財団法人なのかどうかは分からないです。

○ ドイツは現在は認証主義ですが、そのもとで新しく認めているかどうかわからないけれども、家族世襲財産はすでに認められているわけですね。

● 認めているそうです。

○ 広く認めるので、逆に何を排除しているのが、逆にわからない。

● ドイツの条文によると、公共の福祉を損なうものでなければ何でもよいというふうに読めるように思いますが。

○ 公共の福祉に反するような濫用的なものだけを排除するということでしょうか。

○ 今日いただいたWG参考資料5の3ページ目に「6 行政上の監督」というのがありまして、その監督がなされる場合の1つとして、今の公共の福祉のほかに財団の目的を実現できなくなったというのがあるんです。これがどの程度機能しているのかということだと思うんです。もしこれが非常に強く機能していると、内部のガバナンス以外のものがあるのかなという気がします。

○ 今のは6のところですか。

● ただいまのは、参考資料5の3枚目の6の2行目の「また」以下です。

○ これは事情変更のようなものと違うんですか。要するに目的が達成不能になれば、財団法人であっても解散するんでしょうね。

○ ちょっとお聞きしますけれども、認証行為はドイツ語でAnerkennung と書いてありますが、認可とは明らかに違いますね。要するに、一定の要件を満たしているかどうかということの確認行為ですかね。

○ 今度法律で変わったんです。今まではGenehmigung だったのが。

● ただいまのは、参考資料5の※1のCの方に記載しております。
 準則主義も議論されたということでありました。ただ、どこがどう違うのかを、深くは理解できないのですが。

○ だから、自由裁量がないわけですね。

● そこがなくなったということだろうと思います。※1の第1文に改正前には法人格付与の要件の規定がなかったと。それで認可だったというところが改正により要件が明文で書かれて、その要件を満たせば認証により法人格を取得できるというふうに変わったということです。

○ 自由裁量がなくなって、先ほどの事務局の御説明のように、公共の福祉に反するものだけが目的のレベルでだめだとなると、実際にはほとんどの目的が大丈夫だということになるような気がしますね。

● 私もそんな気がしますが、現に自由裁量の時代であっても、家族世襲財団はドイツでは数は少ないそうですが、存在はしていたと、認可がされておったというふうに思います。

○ 先ほど議論した財団法人における営利・非営利とも関係しますけれども、ドイツでは財団法人が企業活動をするというのも認可されるんだろうと思うんです。

● そこは調べ切れていません。恐らくドイツの経済・非経済は、日本の営利・非営利と御案内のとおり違いまして、事業活動、収益活動をするかどうかというところであったと思います。

○ 非営利だから積極的に事業活動をしてしまうとだめなのかな。持株会社的なものでは構わないのではないですかね。

○ 自由な活動としてならどうですか。

○ それはまさに現在の財団法人と同じようなものですね。

○ 投資活動とは区別がつかないです。投資だって収益活動ですからね。

○ 財団法人の営利・非営利と関係して、何が財団法人に実際上許されるのかということですが、社団法人のところでは事業としての制約はできないという議論が有力だったのですが、財団法人の場合は、非営利に限定するということ自体が意味のない制約だとすると、今度は事業の方ではどうかという点が問題となります。事業の方は何でもできるということになると、非営利の財団というのは、いろんな使い方が可能だなと思います。そこにメリットがあると考えるか、それともそれは会社法と衝突して困るということになるか、ですね。

○ それは実態は会社と変わらなくなりますね。

○ ただ、これは資料の11でもありますけれども、この1行目に公益性を要件としない財団法人制度(以下「非営利財団法人(仮称)」という。)とあるんですけれども、法人が事業活動する局面と、活動によってたまった財を内部的に分配するという局面と、全く次元の違うものですね。営利・非営利というのは、内部的に分配する、しないという次元の話で、対外的にどういう活動をするかということとは次元が違います。そうすると先ほどおっしゃられましたように、内部的に分配するということは社団法人以外には考えられず、財団法人ではこういう営利財団とか非営利財団という概念がそもそもないと思うんです。ですから、その上で財団についてはどういう事業活動をすることができるかを制限するかどうかという問題が次に出てくるわけで。

○ 少なくともこういうふうに使ったときの非営利という意味は、社団法人の場合の非営利と恐らく同じじゃない、余り厳密じゃないけれども、ここで言う非営利というのはむしろ積極的な事業はしないという意味で。

○ ただ、役員の報酬の形で、実際にはやれるわけですね。

○ それを実質的な利益分配だというふうに見ると、営利になりますね。ただ、財団法人の法律上の制度上は、社員がいませんから営利という形のものはあり得ないわけですね。

○ ただ、ドイツの会社法の判例なんかですと、そういう役員報酬の形なんかで実質的な利益分配をすることを隠れた利益配当という法理で規制していますので、同じ問題があるんですね。

○ 財団法人を非営利の財団法人に限定するのであれば、利益を実質上分配するようなものはだめだということになるのでしょうね。そのような意味での非営利財団法人を考えることになる。
 利益を実質上分配するような財団法人も実際上あり得るかもしれないけれども、これは我々の検討の対象外であるということですね。

○ 概念はすっきりさせておいた方がよろしいような気がしますが。

○ もう一つのWG資料12の方に関係しますので、まだWG資料11の方も少し残っていますけれども、WG資料12の方も御説明いただきましょうか。

● それでは、WG資料の12でございますが、ちょっと時間の関係もございますので、説明を若干簡略にさせていただきたいと思います。その一助となればと思いまして、正式な資料に下線は引いていないのでございますが、先生方のお手元には、説明の便宜という趣旨から、線の引いたものも御用意させていただいております。WG資料の12は、今まで御議論いただいたものを取りまとめた形になっておりますが、お出しした資料に基づいて御議論があった結果、変更しているところに線が引いてございます。
 それ以外に、今回の議論の整理に当たって、再度、こういうことを御検討いただけないかという点にも線が引いてあります。その2種類がございます。
 第1の1、「非営利法人(仮称)制度を創設する意義、理念」の部分についてでありますが、この1から※3の部分については、すべて今までお出ししたものから、形式な修正がございます。今までは、理念的なアプローチとして3つの考え方、技術的なアプローチとして1つの考え方、これを並列させて意義、理念の議論としておったわけですが、そのうち、社団で言えば、人の結合体の自由活発な活動を促進するという理念の御指摘を本文と言いますか、太い字で書いてあります。ただ、この本文には、それのみならず、「人の結合体」とある部分を「私人の」というように変えております部分ですとか、「営利を目的としない民間団体について」と冒頭書いておったところを、「民間非営利活動を担う主体について」と書きかえてあります。この書きかえた趣旨は2点ありまして、もし、一人社団を認めるということになった場合には、結合体と言うべきなのかどうかという問題点と、それから、財団の理念についても、社団と同じようなレベルでとらえようとした場合に、このような担う主体あるいは私人の、この私人と言った場合には寄附行為者になると思いますが、そういう理念で語り得るかということを考えまして、たたき台としてお出ししております。
 注の部分は民間非営利活動の中身を明確にする趣旨です。
 ※1につきましては、今まで理念的なアプローチで述べられていたそれ以外の御見解について、これは活動に着目した考え方として、本文と両立し得る考え方として@の見方、Aの見方があるのではないかという整理であります。
 ※2は技術的側面に着目した考え方であります。これも両立し得るものと考えております。
 ※3でありますが、冒頭の本文の部分に入るのではないかという考え方と同時に、やはり財団については別の考え方もあり得るのではないかという余地が勿論あると思いますので、※3で、財団については別途、意義、理念を検討する必要もあろうかという趣旨で盛り込んでございます。
 2の部分については、※が追加でございます。定義、名称、総称については議論が済んでからということになりますが、そこを仮にまだペンディングといたしましても、将来、決まった場合には使用制限を設けるべきではないかというふうに考えますので、資料に盛り込みました。
 3の事業につきましては、社団での議論を前提に格別の制限をしないこととするということで変更はございません。
 4につきまして、「運営の電子化」というふうに簡略に表記をする部分が修正点でございます。
 第2でございますが、「社団形態の非営利法人(仮称)制度」についてであります。
 1、「営利の概念」であります。ここに修正点がございます。非営利の概念は、今まで総論に位置づけて資料に書いておりましたが、第2の方に位置づけました。それを明らかにする趣旨も含めて、非営利の概念の横に、営利法人制度との区別ということを明確にいたしました。また、本文でも、営利社団法人制度との区別を明確にするため、非営利社団法人における社員の権利義務の内容として@、A、B、Cに書いたような部分が異なるのではないかということが書いてございます。
 ※の部分は、基本的に今までお出ししたWG資料4と変更はないのでありますが、※2の部分の利益の部分につきまして、「剰余金」という言葉を補足いたしました。議論の中で、ここの利益は剰余金という理解で議論をしていたと思いますので、それをより明確にする趣旨であります。それ以外の部分については変更はありません。
 2の「設立」について、(1)「設立手続」、おめくりいただきまして、(2)「設立時に一定額の財産を保有することの要否」、(3)「その他」、特に今まで御議論いただいたところから変更はございません。
 3の社員、(1)、(2)、(3)、更におめくりいただきまして、5ページの(4)、(5)の部分についても特に変更はございません。
 4「管理」でありますが、4につきましては、若干の変更がございます。以前、御議論いただいた社団の管理、社員総会、理事、監事制度の在り方の中で、別の資料をつくりまして御議論いただいたものを盛り込みました。A案、B案といたしましたが、A案というのは、社員総会が何でも決められるタイプ、B案というのは、社員総会が何でも決められるタイプのほかに、社員総会の権限を限定して、理事会等を法定の機関とするタイプの2つであります。
 A案の中の細かい修正点といたしましては、監事の位置づけについて、「監督」という言葉を書いておったんですが、きちんとこれは法文に合わせて「監査」というふうに置きかえております。
 ネーミングについて、前回、基本タイプと呼んでおりましたところを「社員総会万能タイプ」と、「理事会設置タイプ」に対応させたネーミングということにさせていただきました。※1の修正点は今述べた形式の部分です。
 ※2につきましては、追加でございます。「定款では社員総会の権限を縮小する場合には、理事会タイプのようなものを設けるのではなく、少数社員権のみの手当てをするというようなことも検討できるのではないか」という御指摘が前々回ございました。
 おめくりいただきまして6ページ、B案の本文と※1は形式的な修正のみであります。
 ※3が、B案の理事会設置タイプを置くことに対する疑問点で、社員総会万能タイプで、定款で理事会設置タイプと同じ規律が実現できるのであれば理事会設置タイプを法定することにどんな意味があるのかという御指摘を盛り込みました。
 おめくりいただきまして、7ページの※4ですが、これも追加です。※4は、今、本文にある社員理事会設置タイプに少数社員権に関する規定を加えることによって、より区別を明確化するという御指摘。
 ※5は、パッケージとした機関設計モデルを法定すること自体に意味があるのではないか、また、それが登記上判別可能であれば、意義が増すのではないかという御指摘を盛り込みました。
 ※6は形式的な修正であります。
 (2)の「社員総会」以下は、形式的な修正のみですが、おめくりいただきまして、8ページ、「理事」@のところですが、「なお書き」を付け加えました。
 これは、先ほどの機関設計のところで、A案、B案、いずれになろうとも、社員総会万能タイプが法定されるということで一致していると思いますものですから、本文はそれに対応したもの、なお書きは、もしB案で理事会設置タイプを置くとした場合には、所要の修正が要るだろうという部分でございます。
 Aの「権限」につきましても、なお書きは同趣旨であります。
 Bについては変更はございません。
 おめくりいただきまして9ページ、C、Dも修正はございません。
 (3)の@につきましても、今述べましたA案、B案に基づく修正がしてございます。 10ページのBの※1つ目の、必須とするか否かにはかかわらず業務監査を加える方向で検討という修正がしてございます。
 おめくりいただきまして11ページ、4(1)、変更がないということで今回御提案しておりますが、前回の議論では、ここで附属明細書についての御指摘がございました。若干計算書類の個別的なものを掲げるということについては、もう少し検討して、ほかの部分とも平仄を合わせて、再度、御議論をいただければというふうに思い、資料には書いてございません。
 (2)「計算書類の開示」につきましては、※2に一部修正がございます。※2につきましては、計算書類を債権者以外に一般の者に対しても、閲覧や謄抄本の交付請求すべきであるという御指摘、すべきでないという御指摘、いずれもあるわけですが、すべきであるという御指摘についてなお検討というふうに書きました。
 ※3は決算公告について会社法の見直しにおける議論を踏まえ検討したいということでございます。
 おめくりいただきまして12ページの※1、※2、※3に若干の修正がございます。
 ※1につきましては、定款、社員総会の議事録等を社員、法人の債権者が見ることができるという部分ですが、債権者に社員総会の議事録をすべて見せることが相当かどうかについての疑問が前回ございましたので、引き続き検討としております。
 逆に※2の方は、定款、社員総会の議事録については、債権者以外の一般の者に閲覧、謄写を請求する必要はないだろうということで、ある程度の一致があったと思いますので、そういう趣旨の変更です。
 ※3につきましては、社員名簿の開示について、社員には開示してもよいだろうという御議論があったので、社員と債権者を分ける形で整理をさせていただきました。
 12ページ、同じですが、6の(1)のCに変更がございます。今まで、社員の最低人数のところとの関係でありますが、社員が1人となっても解散しない、設立時に1人か2人かの議論はありますが、途中で1人になっても解散しないということでは一致があったと思いますので、Cのような修正をいたしました。
 13ページに変更はございません。
 14ページの9まで変更はございません。
 第3が、財団関係でございます。
 1、財団公益制を要件としない非営利財団法人制度について、前回の資料10と同じものでございます。
 ※2までは資料10と同じであります。
 おめくりいただきまして、15ページの※3については、前回の御議論を反映させました。公益性要件としない財団法人制度についての問題点といいますか、留意点が、いろいろ御指摘ございましたので、@からEのとおり整理をさせていただきました。
 2以下については、前々回にお出ししたWG資料6のとおりであります。基本財産の要否についてここに掲げたような論点自体があることについては一致があったと思います。中身をどうするかは、今日また更に一部検討を進めていただく部分がございますが、この資料を作成した時点では、資料6のものを書いてございます。
 おめくりいただきまして16ページですが、形式的な修正(2)「その他」と書いておったところを理事・監事制度を意味するということを明示いたしました。
 4、5、6は論点のままでございます。
 第4は、最後に「その他」でありますが、「立法の形式について」、立法の形式や民法にどのような規定を置くべきかについては、引き続きか検討いただきたいというふうに書いてございます。
 17ページ、最後でございますが、(2)中間法人制度との関係について、今までは検討とだけあったんですが、資料上も「中間法人法を統合することを含め、さらに検討する」というふうに変更をいたしております。
 簡単に説明するつもりが長くなりました。以上であります。

○ 今までの議論を全体として整理したもので、また、今日の議論を反映させて更にもう一回整理することになると思いますけれども、今日の御議論、財団法人との関係でも、特にこの第1の「総論」の辺り、ここら辺がこういうまとめ方でいいのかどうかというようなことを御議論いただければと思います。勿論、それ以外の点でも構いません。残りの時間をこの点の議論に使いたいと思います。
 先ほど指摘されまして私もそう思っているんですけれども、財団法人における営利、非営利という概念を、もっと法律的な議論として耐え得るような形でもって整理しておかなければいけないのではないかという気がします。
 さっきのご意見だと、財団法人というのは制度的には当然に非営利なんだけれども、事実上営利に使われることがあると、そういう理解でいいのかな。

○ そうだと思いますね。

○ それはまずい、事実上営利に使われるのはまずい。

○ それがまずいことは恐らく異論はないんだと思うんですが、まずい現象は、非営利社団法人の場合にも実質営利に使われるということもあり得ると思いますので、言葉の整理として非営利社団法人の方を実質のことではなくて、建前として利益を社員に分配しないというふうに整理したのだとすると、こちらも建前論といいますか、形式論理で整理して議論の混乱がないようにするのであれば、先ほど、少し前におっしゃったように、財団の方について非営利という観念、あるいは非営利、営利という区別の観念はあり得ないというふうに整理しておいた方が明快であるような気はいたします。

○ 法律的な議論としては、その方がいいですね。

○ そのうえで、ここでやっている作業の全体の仕事のネーミングを「非営利法人(仮称)」というときには、ちょっと作業上の言わば便宜として、営利法人でないものを非営利法人(仮称)という意味で言っているんだというふうな理解をしておけば、一応理屈としては整うであろうという気がいたします。

○ それでいいのかな。最初のころ社団法人の定義のところで提起された問題があったと思いますけれども。将来、名称をどうするかというときに、社団法人の方は非営利社団法人というのがあるとしても、財団法人については、利益を分配すべき構成員がいないから非営利の財団法人という言い方はしないということになりますね。しかし、社団法人について、ドイツではそもそも切り口が違うけれども、経済的と非経済的でしたか。

● 訳語ですが、経済、非経済というふうに。

○ 理論的には非経済的な財団法人という形で、財団法人の範囲を狭めることがかんがえられますが、日本では経済的、非経済的という概念で限界を設ける考え方がないので、財団法人についてはその目的ないし活動については一切制約がなくなるということになりますが、それでいいのかという問題がありますね。これはまさにこの法律制度をつくるときの理念とか目的とか、そういうものに関係してくるんだと思いますけれども。なかなか難しい。財団法人についてだけ、経済的、非経済的活動という概念を持ち込んで枠を設けるのも、日本の法体系の中では難しい。

○ そうすると、公益法人の方のネーミングとの関係も併せて考えると、それを非営利公益法人というふうに呼ぶのか、ただ、公益法人と呼ぶのかということと併せて、公益法人の中に公益社団法人と公益財団法人というふうに分けるわけですかね。

○ そうでしょうね。1階部分のところはただ「財団法人」と、上に仮に上がると「公益財団法人」になる。

● 今も別に「営利社団法人」というネーミングは逆に言えばなくて、営利を目的とする社団が会社であって、会社には合名、合資、株式会社がある。あと、それ以外にも営利法人として個々の法律上、特定目的会社とか何とか会社というのがいろいろある。そうすると、今までからすると変なんですが、非営利社団法人はただの「社団法人」でもよいのではないか、もし、財団が法人ならただ「財団法人」と言えばよいのではないか。つまり社団法人とは非営利の社団法人のことを言うんだというのもあり得るかとは思ったんですが。

○ 社団法人と財団法人を合せて何と言うんですか、そのときは。

● 常に「及び」でつなぐしかないでしょうか。

○ そうなるのですかね。

● ですから、会社に相当するようなネーミングがあるとよいのではないかと思うのです。財団を入れるとちょっと違うんですけれども、非営利法人を総称するネーミングとして、非営利を使わずに何か考えられないかと思っているのです。

○ 会社の中の組織で、これは社団法人であるという説明をいろいろなときに使うことがありますか。

○ 社団だという言い方をします。

● 商法にも社団という。

○ 言葉が出てくるのかな。

○ 会社は営利を目的とする社団とされています。

○ ですから、今の点が、さっき事務局がおっしゃったことでちょっと気になったんですが、確かに、今、非営利社団法人という言葉がないから、ただ、社団法人と言ってもいいように思うんですが、しかし、では、株式会社が社団法人ではないのか、というふうに居直って聞かれると、それは困るということになって、そこが財団とは問題条件が違うんですね。財団の場合には、商法上の規律を受ける財団法人がないわけですから、そこがやはりちょっと違うので、言葉が不ぞろいにならざるを得ないであろうといういやらしさがあります。

● おっしゃるとおりであります。ただ、民法も今そうしているというだけのことであります。民法が今名称使用制限の規定の中で「社団法人」と使っておりますので、公益の社団法人ですら、これで許されるならば、どうかなと思った次第で、ただ、明治につくるときと今とで、同じというわけにはいかないかもしれません。ただ、この名称使用制限が設けられたのは昭和54年頃ではないかと思いますが。そういう観点は理解しますが、何かよい。事務局でもまた考えてみまして、御相談させていただきながらと思いますが。

○ 私に言わせれば、筋のよい議論ではないのですが、その名称の関係で、前にも御紹介したかもしれないけれども、非営利法人という名前は、社会的な信用がそれに伴うことがあるというので、公益を目的としない非営利法人についても、準則主義はよくないのではないかという議論があるようです。
 この問題にどこまで対処すべきかはともかく、名称がもたらす社会的イメージとの関係では、非営利というのを除いて、単に社団法人と言うことができれば、今の問題は形式的には解決できます。
 いずれにせよ、名前のこともいろいろ御検討と言いますか、念頭には置いておかれた方が、これからはよろしいかと思います。
1の理念のところのまとめ方ですけれども、財団法人と社団法人というものを一緒にして説明しようとして、こういう案としてつくってみたということですけれども、財団法人の場合にはやはり少し違うところがあるかもしれないというので、※印の3のところでは財団法人については別にした方がいいといいかもしれないと書いてある。
 実際上いろいろなところで議論になってくるのは先ほどから御議論いただいているように、財団法人はどうして自由に準則主義で設立を認めるのかという議論になったときに、これにどういうふうに答えるかということと関係してくると思うんです。

○ この理念を書くことの意味なんですけれども、一人社団を認めるかどうかという問題と、非営利財団を認めるかどうかという問題があって、とりあえずそれを全部認めた場合には、こういう書き方になるということだと思います。それを限定していけばいくほど理念をもっと明確に書きやすくなってくるだろうと思います。そうしますと、このペーパーの意味との関係なんですけれども、とりあえず、今の時点でここまでは一番広く取ると合意ができるんだということで出すということだと思いますが、逆に、何だかわからないことをやっているではないかという批判を受ける可能性もあるということです。

○ 第1の1の柱書きですが、非営利社団法人を念頭に置きますと、私、この今日事務局から御提出いただいた理念が、過不足のないところと思いますが、財団法人については、私人の自由活発な活動というところが、少しずれているように思います。それで、私人の自由な財産処分を促進するというようなことになるのではないかと思いますので、その両者を含むような表現ができると、今おっしゃった文脈になりますが、非営利財団法人を広く認めるというふうにした場合には、もう少しこの柱書きを書きかえる必要があるかと思います。

○ やはり、財団法人と社団法人は分けて書いた方がいいのではないかという気がしますけれども。そうしないと、社団法人の方の積極的な意義も薄められてしまうし、財団法人の方の特別な意義というものもあいまいになってしまう。ここでは一応、まとめてみるとしたらどういうことが言えるか、という視点で考えていただいたものだと思うけれども、両方をまとめてその意義を抽象的に捉えるのはあまりよくないのではないかと思う。

○ これは私人の自由活発な活動というと、範囲が非常に広くなっちゃうんですね。ですから、非営利的ということを入れた方が本来の趣旨に合うんでしょうね。

○ ただ、そこでいう非営利は、公益性の有無に関わらずなんです。

○ それはそうなんですけれども、今度は、自由活発な活動というと、営利活動も含まれるというイメージが出ませんか。ですから、何か限定した方がよくはないかという感じがします。

● これは一応、冒頭部分の民間非営利活動という言葉で限定ができているのではないかと考えているのですが。

○ そういう傘の下に入っているか入っていないか。

● これは、分配を目的としない法人といいますか主体について、公益の有無にかかわらず人格を与えますと、その結果、自由活発な活動ですが、その活動は勿論分配しないタイプの主体です。ただ、こう書くと論理的に切れるような気もしないではないですが、いったん人格をもらったらあとは自由という見方もできなくはないですが、書き手の方は前者を考えています。

○ 今、先生もおっしゃったんですが、営利活動ということで何を意味しているのかというところが一番気になっておりまして、営利、非営利は、先ほど申し上げましたように、収益確保ではなくて、内部的に分配するしかないかですから、営利活動という概念は、本当はないんだろうと思っています。ただ、NPO法とかで使われておりますが、NPOでは、ほとんど公益活動という意味で使っているわけで。あえて言葉を置き換えるのならば、ドイツのような経済活動とか、収益活動とか、そういった言葉が多分実態を現しているんだろうと思っております。営利活動、非営利活動というのは非常に頭の中を混乱させる使い方だ、どこかで修正すべきと思っておりました。閣議決定で使われていますが、その段階からおかしいのではないかという意見を申し上げていたところではあります。
 ただ、もう既に一度使われてしまったので、なかなか軌道修正ができなかったという経緯は存じております。

○ 営利、非営利という概念が二重の意味に使われている。その脈絡によって、法人の活動の中身である事業のレベル、そういう非収益的な事業という意味に使う場合と、収益の分配、非分配のときに使われる場合の両方がある。

○ これは恐らく法人の行う事業活動に限定して考えていることなので、営利活動ではなくて収益活動あるいは経済活動という言葉にしなければ、ドイツのように。

● それは勿論できるという前提で、前で限定しているというような、分配、非分配の方を限定しているという趣旨です。おっしゃるとおりだと思います。
 それで、御指摘もあることを踏まえて、詳しく書ける資料であれば、注を付すなどしておるんですが、ただ、簡単な資料になっていけばなっていくほど注は書けなくなってきて。

○ 概念について共通認識を持ってさえおれば、いずれ後でレッテルを張りかえられますので、いいと思うんですが。

○ 私は、概念の方はそれでいいと思うんですが、前からちょっと実質の部分が気になっています。要するに、仮に法人の活動のレベルの問題を考えたときに、非営利法人の活動は何でも自由だということになると、例えば、自由活発な活動というときに、まさに収益活動を目的として、これを自由活発にやるために、この非営利法人制度があるんですというふうにとらえちゃうと、この制度の理念と少し違うのかなという感じがします。以前の議論を蒸し返すようですが、非営利法人については本当は、事業のレベルでおのずと制約があるべきではないかと思います。収益活動も構わないというのは、非営利法人の本来の事業、公益法人とそこは同じ説明していいのかどうかわからないけれども、本来の活動目的である非営利の活動を経済的に支えるものとして副次的に収益活動を行うことも制限しませんという程度の意味なのではないかと思うんです。
 だから、非営利法人の目的のところで、自由闊達な活動というときには、これはやはり収益活動は本来ここに入らないと見るべきなのではないかと思います。

● そこはやはりもともとが分配するタイプの団体か、分配しないタイプの団体かで区別があって、分配するタイプは、分配の前提としての収益が必要ですので、それはまさに収益活動する。

○ それは勿論そうです。

● 分配しないタイプであるという枠であれば、分配しないんですから収益がメインになるわけではないといいますか、ただ、それを制度上もそうだから、更に何か規制を加えるかということはしない。

○ 規制の問題ではなくて理念のところの問題として、積極的に収益活動をすることができることを非営利法人の説明としてするのが難しいと思うのです。

● そうであれば、分配しない団体が活発にする活動は分配しない組織に見合った活動をするのが普通だろうとは思います。

○ 先ほどの質問に対するお答えということで今考えていたんですけれども、収益活動を排除はしないけれども、それ自体が非営利法人の目的になるわけではないという言い方ができるかもしれないと思います。

○ それで明治に現在の民法をつくったときは、公益法人は、非営利ですから、分配しないのが当然ですから、あとは、どこで区別したかというと事業活動の面で公益を目的として活動する法人に限定したわけですね。そして公益法人しか今のところないものですから、今度は公益法人をやめてしまおう、事業活動を公益目的の活動に限定することはやめてしまおうとすると、理論的に限定するものがない。そこで改めて事業活動を限定するかという論点になるのです。

○ そこで基準としてドイツ法で使われる非経済的という概念を持ち込んだらどうかという問題が生じます。結論としては、そこまでやる必要はないと思いますけれども、1つの考え方としてはそういうのがあり得るんですね。

○ とにかく人が活発に動けばいいのであるというのであれば、事業活動を一々チェックする必要はないという考え方もできるわけです。

○ そういう事業活動も敢えて排除はしないけれども、それを行うことを促進するわけではないというぐらいですかね、感じとしては。

○ 今の関連かもしれませんが、この第1の(注)というところなんですけれども、2行目に「公益活動だけではなく、私的な利益を追求する活動も含む」ということで、私的な利益という言葉が出ていまして、これは文脈からすると法人自体の活動だという意味だと思いますが、今の収益あるいは経済活動ということとの関係で、私的な利益というとちょっと誤解を招かないかなという気がしますけれども。

○ 法人の事業という意味ですね。それが公益活動でなくてもよいという意味です。

○ とりあえずここは限定がないという意味で書かれているんだと思いますね。

○ 一見すると、構成員の利益のようなイメージにも取られかねない。

● 文章を変えてかえって行き過ぎたかもしれません。

○ 構成員の利益を追求する活動も含まれますね。その構成員に利益を分配するという形での利益を追求するものは含まないですが、いわゆる中間法人タイプ、共同の利益タイプのものは入りますので、したがって、私的な利益を追求するというのがやや広過ぎるというきらいはあるかもしれませんが、これに代わるものは置いておかなければいけないだろうと思います。
 先ほど事務局から分量の少ないペーパーでは詳しくなかなか書けないという御説明がありまして、そのとおりですが、今の点と合せて、になると思いますが、やはり営利の概念を先ほどおっしゃったように、構成員に分配しないということでここでは整理をしているということをやはり強調するために、もう1パラグラフお考えになるといいのではないかと思います。とりわけ、商法の第52条第2項の営利を目的とする社団というのは、恐らく、今、この非営利法人で使っている考え方と共通だろうと思いますが、有限責任法の第1条第1項の営利行為をなすというのは、これは違いますね。収益事業に近いような意味合いだと思いますので、その2つあるいはNPO法も挙げるのかもしれませんが、幾つかの関連する法規定を挙げながら、やはり二通りで使われていて、しかし、この非営利法人の非営利というのは、この意味に使っているということを、説明にとどまりますし、この場では恐らく共通の理解ということになっていることで、新たなものを付け加えるわけではないのですが、あればなおよいのではないかと思います。

○ さっきのドイツで経済的という言葉が使われているとおっしゃいましたけれども、それは、営利的な活動を排除する意味で使われるwirtschaftlichという言葉ですか。

○ そうです。

○ そうすると、それはあれでしょうか。営利を排除するような意味というのはもともとあるんでしょうか。

○ 営利というのは利益を分配するという意味での営利ですか。

○ ええ。

○ それは排除しないという。

○ しないということですよね、wirtschaftlichというと。

○ というか、非経済的な、民法でカバーしているのは非経済的な社団および財団ですけれども、そこは、非経済的な活動さえしていれば、利益というのでしょうか、何らかの経済的な給付を与えるようなものであっても構わないようです。

○ 給付をだれに。

○ 例えば、構成員とかですね。ドイツ法の切り口は日本のとは違うようです。経済的な団体になればこれは勿論収益を上げるし、その収益をまた分配することも構わない。非経済的団体であっても、収益分配については概念的にだめだということにならない。

○ これは自由活発な活動というのは、勿論、私的部門の活動ですから、私的であることは確かなんですけれども、他方では、社会的な意味を持つような感じもするんですね。だから、自由活発な社会的活動というとまた限定し過ぎでしょうかね。

○ そうですね。

○ 共同の利益、同好会でも、場合によってはいいということになるわけですね。

○ それも含むわけですね。

○ そうです。

○ それだけではなくて、私的な個人的な利益でも構わない。これは前回ですか前々回ですか、公益的な活動をするというのと、それから公益的な活動はしないけれども、利益を分配しないという意味での非営利の私的な活動もする、その両方を一緒に非営利法人制度の理念としてとらえることのその難しさが議論されましたが、ここにもあります。
 今日の御議論で少し深まったのが、財団の議論をきっかけとして、営利、非営利という概念が明確になったことです。特に財団は、構成員に利益を分配するという制度ではありませんから、財団については当然に非営利である、といった点など、議論が深まったとは思います。こんなところが、大体皆様の今までの御議論だったと思います。
 時間が来てしまいましたけれども、これでよろしいでしょうか。なおどうしても御発言されたいという方がおられればどうぞ。よろしいですか。それでは、御意見があれば、事務局の方にお寄せいただければと思います。

● 今の部分と関連するのでありますが、ワーキンググループは3月中は今日が最終回ということでありまして、親会議にまた御報告をいただくことを御相談させていただいております。前回も今までお出しした資料の抜粋のようなものをつくって親会議に御報告いたしまして、それもお手元に今回準備させていただきました。そのお手元に、「ワーキンググループにおける検討状況について(その2)」とあるものなんですが、これは基本的にWG資料の12を抜粋する形でつくってあります。今の御議論を前提といたしますと、多分、第1総論の1の部分については同じ表現がしてございますので、先生方の御意見を反映させた形にして、親会議に報告をするということになろうかと思います点と、あともう一つ問題提起のあった、財団における非営利の概念が資料12にも書いておりませんものですから、そこをどうするかという点がございます。御意見いただきまして、来週の親会議に報告できればという予定を考えておりますので、あるいは座長と事務局で今の議論を踏まえて所要の修正をしてということでよろしいのか、ちょっとその点について御確認をお願いできればと思うんですが。

○ どういう形でうまくまとめられるか分かりませんけれども、今日の御意見を踏まえつつ、少し修正せざるを得ないところもあると思いますので、その点はお任せいただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 そうすると、このワーキングは、次は4月ですか。

● 3月末を目途に親会議の方でワーキングの報告も踏まえ、親会議としての議論の整理を今考えておるところであります。その議論の整理後、また、4月以降、どういう議論を親会議の方でするかということとの兼ね合いで、ワーキングをどうするかということがあろうかと思います。ただ、ワーキングといたしましては、財団について今まさにいろいろな問題点を御指摘いただいて議論が深まっているところでございますので、事務局の希望といたしましては、4月のしかるべき時期から、財団についての検討を更に深めていただければと考えておりますが、また、親会議ですとか、親会議の座長あるいはWGの座長と御相談の上、進行について考えさせていただきたいと思っております。

● また照会させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○ そういうことで、日程はアンケートとして御都合のよろしいときにお願いします。
 では、本日はこれで終わります。ありがとうございました。

● それから、あと1点、親会議の関係でございますが、明日3時からお願いしてございます。よろしくお願いいたします。あらかじめの御連絡は2時間と御連絡しておりましたけれども、現在、事務的には1時間半程度かと思っておりまして、いずれにしても、これから座長と相談させていただきたいと思っております。


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