1.平成16年9月3日(金)13:00〜15:00
2.虎ノ門第10森ビル4階
3.出席者
(座 長) 能見善久(東京大学教授) (座長代理) 中田裕康(一橋大学教授)
岩原紳作(東京大学教授)
植垣勝裕(法務省民事局参事官)
山田誠一(神戸大学教授)
山野目章夫(早稲田大学教授)(50音順) (事務局) 西室長、横田参事官、岡本企画官、野口調査官 4.議事概要
● 事務局から、「非営利法人WG資料21」に基づき説明があり、以下のような意見が出された。 (基本的方針関係―民法典に残すべき規定について)
- 資料中の条文のうち、民法49条(外国法人の登記)は民法典に残す必要はないのではないか。特に民法49条2項は外国法人の登記がなされるまでは法人の成立を否認できるとしているが、これがどこまで実質的な意味を持つのかという問題もある。会社法では、外国会社に関する規定があり、それ以外の外国法人としては(外国の)国及び国の行政区画くらいしかないことを考えると、登記するまで法人の成立を否認させる必要はないのではないか。
- 外国法人に関する規定は、法人一般の規定とは異なるように思う。民法典に残す必要があるのだろうか。
- 民法36条の規定は、自然人に対する民法2条の規定に対応して、残してよいだろう。
- 資料中に書かれている条文のほかに、民法53条・54条は民法典に残してもよいのではないか。54条は表見代理的な規定として一般的といえるのではないか。
- そもそも民法典に何を残すかということについては、民法で考えるべきことで、最終的にこのWGで決めることではないのではないか。少なくともこの点は合意しておくべきであろう。
- 民法70条2項の破産の申立義務は、法人の一般的規定とはならないのであろう。非営利法人法に規定するかどうかであるが。
(←70条2項は今の時点でも維持すべきかどうかが問題であろう。)- ドイツでは現在も相当する規定がある。法人の状態を最もよく知っているのは理事であり、理事に破産の申立義務を課し、さらなる損害を生じないようにしようというのがヨーロッパ的な考え方。
- 公益性のある法人の債権者は、商法の場合と異なり、取引上の債権者のように迅速な破産申立を期待できないことが多いことにも留意が必要。理事に申立義務を課すこともあるかも知れない。
- 取得原価主義の会計の下では、破産状態にあっても、実態としては運営が成り立っている場合もあり、申立義務を課す必要はなかろう、というのが商法。しかし、時価会計が幅広く導入され、企業の実態と会計が近づけば、早めに申し立てるべきという考え方もあり得る。
- 破産法全面改正の際に、民法70条2項は不要ではないかという議論があったが、民法の実質改正になってしまうので、手を付けなかったという経緯がある。破産法全面改正における検討過程を調べ、政策的に残すべきかどうかを検討すべきと考えるが、法人の一般的規定として残すかどうかは疑問。
- 限定承認の場合の相続人の申立義務が削除されたことにも留意すべきであろう。民法70条については、民法典に規定することにはならないが、非営利法人法において規定するかどうかについては、法人の解散事由との関係でも検討していく必要がある。
- 1階の法人については、申立義務を設ける必要はないが、2階の法人については、設けてもよいと考えられるのではないか。
(社団関係―設立当初の社員を定款記載事項とすることについて)
- 設立当初の社員は、株式会社の発起人と同じ様な立場になるが、発起人には会社設立に関する任務があり、その任務を怠ったときは、商法193条により損害賠償責任を負うものとされている。しかし、非営利法人では、設立当初の社員の任務がはっきりせず、任務懈怠の責任規定もないので、設立当初の社員を定款に書かなくてもよいのではないか。
- 定款作成に始まる法人の設立という法律行為を誰がするのかを確定する意味はあるのではないか。設立当初の社員を定款に書くことは責任の有無に関わらず必要なのではないか。
- 社団法人の制度趣旨が人の集合であることを考えると、法人の出発のときに、誰がいたのかを(署名で確認できるとしても、)より公式な形で明らかにしたほうがよいのではないか。
- 現在の社員を明らかにすることは意義があるが、何十年前の(設立当初の)社員が誰だったかということを明らかにする必要もないのではないか。
(←設立当初の社員を定款記載事項とする意義について検討したい。)(議決権について)
- 社員総会の議決権における別段の定めの範囲について、会社法制の現代化に関する要綱試案では、株式譲渡制限のある会社についてのみ定款で議決権に関する別段の定めを自由に定められることとしている。閉鎖会社では社員自治が図られやすいことから自由とするが、公開会社では閉鎖会社に比べると社員自治が図られにくいことや一般の株主を保護する観点から自由にしないということである。非営利法人において、誰でも社員になれるとした場合、定款の議決権の定めによってある一人の社員がオールマイティになることを認めてよいか。
- 会社とは異なり、非営利法人では経済的な利益がないので、定款による別段の定めを広く認めても問題はない。無議決権社員を認めないというのは、公序良俗で解決できる問題なのか。(←そう考える。)
- 定款による別段の定めに制限をかけるとしても、どうやってチェックするかという問題がある。
- ある社員が議決権の大半を持つことにすれば、無議決権社員を認めないことを骨抜きにできる。(←現行の公益社団法人や中間法人にも同様の問題がある。)
- 拠出金を設置した法人において拠出金額に応じて議決権を有することを定款で定めることも認めてよいと考えるが、この点に問題がないかオープンに議論してはどうか。
- 協同組合の議決権はどうなっているのか。(←1人1議決権と法定されており、定款による別段の定めは認められない。)
- 定款による別段の定めの限界を設けるとしても、具体的な設定は難しい。
- 例えば、設立当初の社員は100議決権を持ち、数年後以降に入社した社員は1議決権を持つとする定款の定めはどうか。
- それを了解して入社したのであれば認めてよいのではないか。
- 巨大な法人で、定款を理解せずに入社するような、消費者的な社員がいるかどうかにもよるのであろう。巨大な法人ができなければ、実質的には問題がない。
- 今後は大きい法人ができるかもしれない。
- 議決権について、現行民法では、定款による別段の定めを無限定に定められることになっているが、指導監督の運用上制約があるのかということを教えてほしい。
(理事の法人に対する責任の制限)
- 理事の責任制限は何らか規定せざるを得ないとは思うが、商法並びの複雑な規定を置くのか。
- 非営利法人に理事の責任制限のような配慮は必要なのか。
- 非営利法人でも理事の判断ミスにより法人に損害を与えることはありうる。会社に規定されて非営利法人に規定されないというのでは平仄が合っていない。
- 理事に安心して仕事をしてもらうというような広い意味での理屈は成り立つかもしれないが、商法における責任免除のような細かい規定を盛り込むのか。
- 非営利法人の理事は無報酬のことが多く、この場合、責任を報酬の数年分とすると責任がゼロになってしまうが、それでよいか。
- 有識者会議では、善意で理事を務めているのに責任を問われては困るという意見がある。1階の非営利法人で責任が限定されず、2階では限定されるというのは不適当ではないか。
- 米国では、非営利法人では理事の責任の制限が認められ、営利法人では認められていない。
- 非営利法人では、社外取締役の責任制限に当たるものを別途考えるのか。(←今のところ、考えていない。)そうすると、理事は原則として代表権を持つのだから、報酬の6年分ということになるのか。
- 有識者会議でも一度議論してもらうことにしたい。
(債権者による社員名簿等の閲覧又は謄写の請求)
- B案(債権者は、その権利を行使するために必要があるときは、これらの書類の閲覧又は謄写の請求をすることができるものとする)は、条文の例があるのか。
- 商法293条ノ8などにある。
- A案(債権者は、これらの書類等の閲覧又は謄写の請求をすることができ、法人は、正当な理由がないのに拒んではならないものとする)とB案とでは、立証責任が逆になる。
- 非営利法人は社員が責任を負うことは少ないのだから、B案がよいのではないか。
- 社員が経費負担義務を負う場合に、経費負担の請求を債権者が代位行使するときには必要かもしれないが、実際上はほとんどない。そうするとB案になる。
(拠出金−現物拠出に対する理事の財産価格てん補責任−)
- 理事による財産価格てん補責任の意義は、会社のような資本充実のためか。(←他の拠出者との関係で均衡を失することのないようにするもの。)
- 理事が価格を決定することが根拠になるのであろう。10の価値しかないものを理事が30の価値と決定した場合に、20の財産が余計に流出することになる。資本充実とは関係がないのではないか。
- 拠出金が資本に準ずるものとなる。拠出金額は登記されるのか。(←登記される。なお、検査役による検査を経ていれば、理事は不足額についての責任を負わない。)
(拠出金と社員資格の関係)
- 定款で社員資格と拠出とが結びついている場合に、拠出しようとしていた者が拠出しなかった場合はどうなるのか。(←失権するので拠出者にはなれない。その結果、社員資格がどうなるかについては、個々の定款の具体的な定めによる。)
- 一旦社員になるが、拠出しないと社員の地位を失うということもあるのか。(←定款の定めによってはそういうケースもあり得る。)
- 社員の地位に関する一般的なケースとバランスを欠かないか。(←社員の資格変動は定款の定めにゆだねられている。)
(財団関係―設立当初に保有すべき財産の要否について)
- 財団の純資産は、存続中も維持しなければならないのであれば、あまり高い額は適当でない。そこで、最低額は300万円くらいとし、その効果については、一定期間内に回復しないと解散するとしているB案が適当だと思う。
- 設立当初に保有すべき純資産には、設立時に集めた寄附等も含むことになるのか。(←設立時の寄附が含まれないとする必要はなく、設立時までに受けた寄附も含め、純資産が300万円あればよいと考えている。)
(基本財産(仮称)について)
- 現在の公益法人(指導監督基準や寄附行為例)における基本財産は、処分制限の問題として考えられている。それも資料に説明として書いておいたほうがいいのではないか。
(評議員会について)
- 評議員会の決議を要する事項(P.26三1(2)※1の@〜C)のほかに、寄附行為で定める事項を評議員会の権限とする必要はなかろう。ガバナンスの観点からも、権限のバランスを考えれば、パターナリスティックだが、これでいいのではないか。
- 理事の解任事由について、理屈としては資料のとおり法定事由がなければ解任の決議はできないとしてよいと思うが、実際上不都合はないのか。(←現行の公益法人における一般的な寄附行為例では、解任事由を列挙している。)
- 解任事由としてどのようなものがあるかを整理して議論することとしたい。
- 次回WGは最終回なので、なるべく案を確定させ、確定できない事項についてもいくつかの案を提示できるようにしたい。
以上