1.平成16年7月28日(水)18:00〜20:00
2.虎ノ門第10森ビル4階
3.出席者
(座 長) 能見善久(東京大学教授) (座長代理) 中田裕康(一橋大学教授)
岩原紳作(東京大学教授)
植垣勝裕(法務省民事局参事官)
金子宏(東京大学名誉教授)
山田誠一(神戸大学教授)
山野目章夫(早稲田大学教授)(50音順) (事務局) 西室長、長屋参事官、岡本企画官、野口調査官 4.議事概要
● 事務局から、「非営利法人WG資料19-2」の「第三 社団形態の法人」のうち「五 計算等」から「一〇 外部者による監査等」までについて説明があり、以下のような意見が出された。 (五 計算等について)
- 決算公告を義務付ける場合、正しい内容の公告がされることをどうやって担保するのか。
- 法制審議会会社法(現代化関係)部会では、全ての株式社会に決算公告を義務付けることとしたが、会計監査人の設置を強制しないものにまで決算公告を義務づけるのかという議論があり、現行の虚偽公告への過料に加え、何か実質的に担保できる方法を検討することになっている。
- 会社法で実質的に担保する方法が検討されるとすると、非営利法人でも同じことになるのか。(←その方向となろう。)
- 公告の方法は、官報、日刊新聞紙への掲載のほか、事務所の掲示板への掲載でもよいのか。(←よい。現行の中間法人法における公告の方法の解釈も同様である。)
- 事務所での掲示を可としても、小さな非営利法人には事務所のないものもあろう。新聞、官報に掲載するのはコストがかかるし、インターネットも難しいのではないか。
- NPO法人の決算公告はどうなっているのか。(←決算公告の義務づけはないが、定期的に所轄庁に事業報告書等を提出し、そこで一般の閲覧に供している。)
- 中間法人では決算公告の義務はあるのか。(←ない。)
- 決算公告義務は非営利法人としては初めてか。公告の方法を商法と異なる形で規定する可能性はないのか。(←主務官庁等による指導監督によるのではなく、法律上の義務とすることは、初めてだと思われる。事務所での掲示を認めている点で商法とは異なっている。)
- 決算について従来の中間法人よりもオープンにする理由は何か。(←社員の責任が有限であるならば、本来、法人の財務内容の公開が必要と考えられる。)
- 有限責任中間法人では基金として最低でも300万円の拠出をしなければならない。非営利法人においては、それがない代わりに決算公告を義務づけることで有限責任を基礎づける必要がある。
- 法制審議会会社法(現代化関係)部会で決算公告を義務づける方向としているのは、最低資本金をなくすことで資本によって有限責任を基礎づけられなくなったことによるものである。非営利法人もこれと同じことである。
- 公告方法として簡易な方法を認めれば、たいした義務にならないのかもしれない。
- 民間の会社の無料ホームページサービスを利用するというのでも負担はかなり軽減されるのではないか。
- 小さい法人は取引をするわけではないので、開示に余計な費用がかかるようでは本末転倒になる。
(拠出金について)
- 定款で社員に拠出金の拠出を求めるタイプで、定款で残余財産を返還しないと定めた場合、拠出した財産の扱いはどうなるのか。拠出した段階で債権がないと扱うのか、返還されないとなった段階で債権がなくなると扱うのか。
- 拠出金は、一般債権に劣後はするが、財産が残っていれば返還することを前提とする制度である。清算時に個別の同意を得れば、返還しないことはできるだろうが、予め定款でそれを定めることはできるのか。
- 例えば、拠出者の権利として、拠出額の数%しか戻ってこないことがありうるという定めを定款に置けるかということか。
- 入社時に寄付を求めるという法的構成では足りないのか。拠出金という語が多義的だと混乱を招くおそれがある。
- 中間法人の基金制度を負債性のあるものとしたのは、税金がかからないようにする意味もあった。返さなくてもよいということになれば負債性がないことになる。
- 税金との関係では、最後に拠出分の贈与がなされたことにしたいのであろう。
- 定款も読まれないほど社員の多い団体では消費者法的な説明義務の問題が生じうる。
(九1 残余財産の帰属について)
- 1階の非営利法人でも、残余財産を社員に帰属させない法人として寄付を集めたときに、あとから定款変更して社員に残余財産を帰属させられるようになるというのは問題があるという意見があった。
- 残余財産を社員に帰属させることを法的に禁止する理屈づけはなかなか難しい。民間の財の処分権限を国家が奪うというだけの理屈づけは難しい。
- 非営利性を実質的に担保するために残余財産について社員への帰属を制限するというのならありうる。
- 残余財産を社員に帰属させることができない法人類型を設けるかどうかについては引き続き議論することとしたい。
(業務検査役について)
- 現物拠出の調査のための検査役以外の検査役は、規定しないのか(←業務検査役について中間法人法第70条に規定がある。現在の資料ではこれを盛り込んではいないが、規定しないという趣旨ではない。)
- 帳簿閲覧権はあくまでも帳簿のみを素人である株主に閲覧させるものであるが、業務検査役は裁判所が選任する者がなり、濫用の危険性も少ないことから、商法は伝統的に業務検査役を重視してきた。
- 直感的には業務検査役というのは重いようにも思う。
- 自律的なガバナンスが必要だということ、信託でも業務検査役を導入することを検討していること、中間法人でも導入されていることから考えると、削除する理由もなかろう。
(←業務検査役について資料に盛り込むこととしたい。)(六2 定款の変更について)
- (「定款による別段の定め」に関する規定は設けないとしているが)この「定款による別段の定め」は決議要件を軽くすることだけでなく、重くすることも含まれるのか。原始定款に全員一致でないと定款変更できないと書いてあっても、議決権の4分の3で定款変更できるとなるのではないか。
- 事項によっては、全員一致でないと定款変更できない事項が出てくるのではないか。
- 残余財産の分配について厳しい規律を求めようとすると、定款変更の要件を厳しくするべきだという議論に結びつきやすいかもしれない。
(一〇 外部監査等について)
- これまでの議論では、資産と負債で基準を設ければよいという意見が多かった。
- 株式会社では、資本金5億円以上、あるいは、負債200億円以上とされている。非営利法人にも、例えば、SPCとして使うなど相当大規模のものが出てくるかもしれない。
- 平成15年度公益法人白書のP.63からP.64に、資産・負債・正味財産規模別の公益法人数が書かれており、これが参考になろう。
- 営利法人と同じ基準というのが一つの考え方だと思う。引き続き検討したい。
● 事務局から、「非営利法人WG資料20」に基づき、財団の基本財産について説明があり、以下のような意見が出された。
- 財団形態の法人では、配当の問題は生ぜず、また、負債性のある中間法人の基金のように代替基金の積立ての問題も生じない。最低基金・最低資本金がねらっているものは、財団ではあてはまらない。
法人格付与の際に、最も問題になるのは債権者保護であり、債務超過にもなっていないのに、最低の枠を割り込むと財団が終了に向かうというのは過剰規制ではないか。(1)・(2)の方向で検討すればよいと思う。- 財団制度の濫用の観点から、法人格の付与の対象となり得る財を限定すべきとすると、文化的・社会的な評価では基準にならず、経済的な評価で基準を設けるしかない。そうすると、純資産の枠(数額)でしか要件を設定できないだろう。純資産の枠(数額)は、法人格を持ち続ける以上、維持すべきものであり、割り込んだ場合には解散事由とすべき。
その観点からすると、(3)を制度化する必要がある。(1)は、法人を構成する財産をオープンにするだけのもの。(2)は内部的な処分制限に過ぎない。- 財団ならば一定の財産があるべきだし、財団制度の濫用も防ぐべき。設立の瞬間しか財産がなかったという状態を実効的に防止するためには、(3)やそれに類する規律を設けるべきである。
- EUの会社法は最低資本金の維持を求めており、最低基本金を割り込むと増資する義務がありそれができないと法人は解散に向かうとされている。今回会社法で最低資本金制度を廃止するのは、日本では、様々な理由で最低資本金の維持義務を課しておらず、中途半端なものとなっていたから。財団ならば財産を持っているべき、とするのであれば、(3)枠(数額)の維持義務を課したほうが適当である。
- 計画的に財産を取り崩す財団もあることから、設立段階の規制だけでもよいのではないか。
- 計画的に財産を取り崩すといっても、最低限のミニマムというのはあってしかるべきであろう。
- 設立時は小さな法人で、後に寄付を募って大きくなっていこうという財団もあると思われる。したがって、設立時の最低額を大きくすると過大な規制になる。
(←現行の「基本財産」は(2)寄付行為の定めに基づく財産の処分制限という考え方によってその概念が構築されており、(3)を基礎するものとは考え方が異なる。誤解を避けるためには、「基本財産」という名称も変えた方がよいか。)- 変えたほうがいいかも知れない。処分制限は、各財団が寄附行為でそれぞれ定めればよいだけのこと。
- 最低財産について、債権者保護としての枠という考え方と財産の法人格の基礎付けという考え方がある。この二つの考え方を整理して議論することが必要である。ただ、前者は最低資本金が廃止される以上維持が難しくなるかもしれず、後者だけとすると説得力が弱い。
- (3)の考え方に基づく規制を設ける方向で検討するが、(3)の考え方は不要であるという意見があることも念頭において、引き続き議論していきたい。
- (3)の枠には、最低額としての枠と財団が自由に設定する枠という二つの種類があるが、最低枠だけに規制を設ければよかろう。
● 事務局から、「非営利法人WG資料19-2」の「第四 財団形態の法人」について説明があり、以下のような意見が出された。 (三1 評議員会について)
- 評議員会について、有識者会議では諮問機関であるべきという意見があった。WGでは、単なる諮問機関という意見はなかった。
- 有識者会議の意見でも、評議員会が役員を選解任する機関であることは認めていると思う。そうすると、法的には、その時点でもはや諮問機関ではない。
有識者会議では、評議員会が評議員を選任することが従来と異なるという反発があった。
(← WGの議論では、理事会が評議員を選び、評議員会が理事と選ぶという現在の在り方は相当でないとの意見が強かったので、現在の案となっている。)- 有識者会議での意見が、評議員会が反対しても最後は理事会だけで決められるというものであれば、WGの意見との違いは相当大きい。
- 9月に引き続き議論したい。
以上