1.日時:平成16年7月7日(水)17:00〜19:00
2.場所:虎ノ門第10森ビル4階
3.出席者
(座 長) 能見善久(東京大学教授) (座長代理) 中田裕康(一橋大学教授)
岩原紳作(東京大学教授)
植垣勝裕(法務省民事局参事官)
山田誠一(神戸大学教授)
山野目章夫(早稲田大学教授)(50音順) (事務局) 松田事務局長、西室長、長屋参事官、田中企画官、岡本企画官、野口調査官 4.議事概要
● 事務局から、「非営利法人WG資料19」に基づき、非営利法人(仮称)制度の創設に関する試案(その1)ついて説明(第一から第三の三まで)があり、以下のような意見が出された。 (第一 基本方針について)
- 民法を改正する旨が書かれているが、中間法人法を廃止又は改正することも資料に記載した方がよい。
- 民法には、理事と法人の関係や理事の権限などの規定を残すのだろうか。
- 民法第33条(法人法定主義)、第43条(法人の能力)は残るのだろう。
- 商法の通説は、民法第43条(法人の能力)の規定が一般規定として会社にも適用されると解している。民法第43条に相当する規定がなくなると、会社に適用される規定が残らないことになってしまう。
- 他の法人法において、民法の規定を準用しているものを整理する必要がある。
- 法人法制において、民法をその一般規定とするのか、新たな非営利法人法を一般規定とするのかという問題がある。民法第34条・第35条でカバーできないものがあるかも知れないので、民法典に一般的な規定を残さなければならないかも知れない。また、二の※については、@・Aと選択肢を記述するのではなく、@を削り、「民法の改正のほか、新たな非営利法人(仮称)制度に関する単行法を制定する」でよいだろう。
(第二 総則的事項について)
- 名称制限については、中間法人法と同じ規律を定めてはどうか。
- 「拠出型」や「非分配型」という文字を名称の一部に使用することの可否はどうだろうか。名称制限の問題でなく、不正競争防止法のような一般的なルールによるのではないか。
- 会社では、商号自由の原則が妥当し、明文で禁止されていない限り商号の選定は自由である。但し、公序良俗違反という理由で登記を拒否した例はある。
- 企業会計原則は、資本等の概念を用いて営利法人向けに作られたものであり、非営利法人をカバーしたものではないのではないか。(←ただし、中間法人法は株式会社にならったものとなっている。企業会計原則についても、商法上は単に「公正なる会計慣行」としか規定されず、いずれにせよ会計原則そのものは法律事項ではない。)
- 「剰余金」の定義をどう考えるのか。会計の仕方によっては、「剰余金」はその内容が変わり得るものなのではないか。
- 「剰余金」のあいまいさはあるが、中間法人法で「剰余金」という用語を使っており、当面の定義は、一※1の定義を基に議論することとしてはどうか。
- 「四 権利能力」としているが、民法43条は行為能力を定めたものとする学説もあり、四の内容を規定するときに当該法条の見出しを「権利能力」とすることが適当かどうかは議論になるかも知れない。
(第三 社団形態の法人/一 設立について)
- 設立時の社員の最低人数は、「社団」といっていることもあり、2人以上とすることでよいでしょう。
- 監事の住所も登記事項となるのだろうか。法制審会社法部会において、取締役の住所を登記事項から除外して欲しいという要望があり検討したが、本人特定の問題があり、取締役の住所は登記事項のままとされた。監事は第三者責任を負うことがあり、代表訴訟のときは法人を代表することを考えると、監事の住所の登記は必要だろう。
- 理事・監事は個人に限られるのだろうか。ドイツやフランスでは会社が理事・監事になれるし、実際になっているが、今般の会社法の改正ではこの点に関する明文の規定は盛り込まれない。ただし、法人が合名会社の無限責任社員になれることになり、その場合の必要な手当てを整備することになっている。非営利法人で法人でも理事になれるとするならば、そのような手当てを整備する必要があるだろう。
(同二 拠出金(仮称)について)
「現物拠出の調査」「拠出金(仮称)の増加」
- 現物拠出の調査については、少額の場合に検査役選任を不要とする特例を設ければ、検査役の選任を原則としてよい。
- 低い価額の財産を拠出して不当に高く評価するようなことがあれば、破たん処理の場合や拠出口数に応じて議決権を有するとした場合に、拠出者間の不公平が問題となる。
「拠出金(仮称)の返還に係る債務の弁済の順序」
- 拠出金の増加については、定款の定めがなければ、原則として理事が決定することになるのか。
(←そう考えている。ところで、定款で拠出金の総額を定めた場合、申込額がその総額に満たなくても、募集を打ち切り、拠出金の拠出を求めてよいのか。)- 理事に引受担保責任がないのであれば問題ないのではないか。
(←その場合、定款に定めた拠出金の総額は、理事が募集できる拠出金の上限という意味と解するのか。)- 定款に「上限とする」と定めれば上限という意味はあろうが、引受担保責任がないのであれば、拠出金の総額の定めは意味がないということになるのではないか。
- 社団の場合、拠出金の拠出がされた法人において、拠出金は債務であり、これを弁済した残りが残余財産である。一方、財団において拠出額の一部を戻す場合、それは残余財産を返還するという理解になるか。
- 財団の場合は、単に寄附行為で残余財産の帰属の方法を定めるだけであって、拠出型を考えているわけではなく、それは債権債務関係ではないから、残余財産を返すことになるのだろう。
(同三 社員について)
- 設立時の財産保有規制もなく、社員の責任も有限なので、取引先から信用が得られないという場合には、代表者が個人保証をつければよいのであるから、無限責任タイプの法人類型を設ける必要はないということか。
- 現行の無限責任中間法人は、法人の選択により、移行もできるし、移行しなくてもよいということか。(←資料では特に明示していないが、いろいろな方法が考えられる。)
- 有限責任タイプに移行するとした場合、すでに債権者がいるときはどうするのか。(←所要の債権者保護手続を置くことになるのではないか。)
- 既存の無限責任中間法人が解散するまで残るということはありうるか。(←ありうる。)
- 無限責任中間法人は、計算やガバナンスに関する規律が厳しくないので、ニーズがなくはないのではないか。
- 理論的にニーズがあるとしても、政策的にこれに対応して立法するかという問題はある。
- 仮に無限責任の法人類型を設けるとしたら、どの規定を緩めるか。最低基金はないので緩めるものはあまり考えられないが、無限責任中間法人をなくして困ることがあるとすれば、無視できないかもしれない。本当にニーズがあるかどうか調べられないか。(←検討する。)
- 無限責任の法人類型を設ける場合は、名称も別のものになるのか。
- 第三者との関係では別の名称にするべきではないか。
(同四 管理について)
「議決権」「理事、監事」
- 定款で別段の定めをすることを妨げないとしても、議決権のない社員は認められないであろう。非営利法人では、社員が法人の運営に参加することに意義がある。
- 拠出金の額に応じて議決権を有する旨を定款で定めることは、非営利性との関係で問題がないか。協同組合はどうなっているか。(←消費生活協同組合の組合員は1人1議決権とされており、定款による別段の定めは認めていない。)
- そのような定款の定めは非営利性に反するわけではなかろう。
- 社員には拠出金を拠出する者としない者があってもよく、第三者で拠出する者があってもよい。ただ、拠出の額に応じて議決権があるとことも考えられ、残余財産の帰属を決めるときに、拠出額の多い者が自らに有利に定めてしまうことがあるかもしれない。人の結合なのに拠出額に応じるというところに違和感があるだろう。
- 有限会社では、原則として持分に応じた議決権を有することとしているが、別段の定めができる。ただ、別段の定めには限界があると解されている。株式会社では、別段の定めの限界として、議決権制限株式の総数は発行済株式総数の二分の一を超えることができないと規定されている。
- 理事会設置タイプを制度として別途設ける必要はないということでよいだろう。ところで、定款の定めにより、社員総会の権限を縮小して理事の権限を広げつつ、監事を設置しないとすることは可能なのか。(←可能である。ただし、その定款の定め自体も社員総会の特別決議があれば変更することができる。)
- 特別決議の定足数は総社員の半分以上となっている。一方、一般決議では定足数をいくらでも下げられることになっているが、理事の選任については、一定の定足数を設けてもよいのではないか。
- 特別決議には4分の3以上の賛成が必要とすることは重過ぎないか。株式会社は3分の2以上である。
- 有限会社は4分の3以上である。
(←中間法人や民法上の社団法人でも4分の3以上とされている。ただし、民法では別段の定めを認めている。)- 監事の設置は任意としつつ、任期を4年としているが、会社法制の現代化に関する検討ではどうなっているのか。
- 有限会社制度を取り込むため、監査役は必置ではなくなる。任期は4年としているが、株式の譲渡制限のある会社であれば10年を上限として定款で定めることができるようになる。
(←NPO法人は監事が必置で、任期は2年以下とされている。)- 法人との関係で理事の忠実義務はどうなるのか。2階の法人には理事の忠実義務を規定するかもしれないので、1階で規定しないとアンバランスになるのではないか。
(←善管注意義務は、委任の規定に従うということで含まれる。中間法人法の立案時には、忠実義務は善管注意義務と同じ内容と捉えて、商法第254条ノ3は準用していない。ただし、中間法人法と同じでよいかという点は検討する必要がある。)- 商法学者の間では、忠実義務は善管注意義務とは独立したものと解するのが多数である。
- 忠実義務は、公益法人と非営利法人では同じものと解してよいのではないか。
- 米国では、忠実義務の大きなものとして競業避止義務がある。これは非営利法人にはあたらない。そうすると、営利法人と非営利法人とでは忠実義務の内容が異なるのではないか。
- 忠実義務を盛り込むことに問題はないだろうが、内容は議論になる。
以上